《東京#CODE》最近調子が悪いのは #全部気圧のせい?

illustration: Shogo Sekine

 今年の夏から秋は、とても変な天気続きでした。実のところ、ここ数年、変な天気が常態化しているので、もはやノーマルが何なのか分からなくなりつつもありますが。そんな折、こんなことがありました。台風一過の平日の夜。パーティーに行く用事があり、銀座線で渋谷→上野を往復したときです。いつものクセで車内をなんとなく観察していたところ、あるカップルが目につきました。女子は低めの身長で、20代前半。容姿はごくごく普通の女の子。少し気弱な雰囲気です。相手の男性は多分40代。少し頭髪が寂しい感じで、彼らの年齢差もさることながら、2人のラブラブぶりはとても車内で目立っておりました。男性も女性もお互いうっとり状態。時々キスしたり、周囲が見えていない感じで。ちょっとお酒も手伝っているようです。その後に、電車を降りて上野コンコースを歩いていると、またしても同じような年齢差カップルが。こちらも手をお互いの腰に回して、かなりのラブラブぶり。こういう夜もあるよねー、と思いつつ用事を済ませて帰りの車内。ここでも同じような歳の差カップルが乗車口の三角コーナーにぴったりと体を密着させて、キスしているではないですか。結局この日4組も。もはや神様が仕向けているとしか思いようがない、愛の夜でした。

 この話をある飲み会の席ですると、そこにいた男子が「それ、気圧のせいですよ」と。「気圧がぐっと下がったときはよろめき指数があがるんです」と。彼曰く、よろめき指数とは気圧の変動で女子が落ちやすくなる度合いのこと。特に気圧が急激に下がる台風の日は、女性が不安定になり、ナンパ成功率がアップするのだとか。なんという新説。これは本当でしょうか?

 最近、#全部気圧のせい、というSNSのハッシュタグがあります。「頭痛がする #全部気圧のせい」、「眠いなあ #全部気圧のせい」、「衝動買いしちゃった #全部気圧のせい」、「わたしがあほなのは #全部気圧のせい」などと使います。確かに私の周りでも「低気圧で気分おちこむー」とか「持病悪化中」などとSNSに書き込む人がいます。本人に聞くと、気圧の変化はかなり体に変調をきたす、と言います。アプリでも最近「頭痛ーる」というものがあります。気圧を予想して、大きく下がるときは事前にアラートを送ってくれるというもの。気圧の変化によって、「通常、やや注意、注意、警戒」など表示がされています。実際、頭痛持ちの人がよくDLしていて、確かに低気圧性頭痛、気圧変調性頭痛を訴える人が増えているそうです。気圧のせいで血管が膨張したり、自律神経を乱したりすることがその原因ともいわれています。男子よりも女子にこの傾向は強いようです。病気の方にとっても、もちろん気圧は大問題。

 そんな中、病気はもちろんですが、他のいろいろとイヤな事も、気圧のせいにすることで乗り越えられるという面もあります。それはそれでも悪くないのじゃないかと。彼女の機嫌が悪いのも、お持ち帰りされてしまったのも、衝動買いも、気圧のせい。それもありかな、と。生きていれば理由もない行動だってあります。すべてに理屈をつけないで、気圧のせいにすればうまく受け流せるかもしれません。気圧も使いようなんです。あ、くれぐれもズル休みはだめですよ、それは嘘つきになっちゃいますからね(笑)。

THIS MONTH'S CODE

#よろめき指数

蛇足だが「よろめき」という言葉を流行させたのは三島由紀夫。1957年『美徳のよろめき』という不倫文学の代表的な作品で、世の中によろめきブームを巻き起こした。

#頭痛ーる

住んでいる住所を入力すると気圧変動を事前に教えてくれるアプリ。気圧グラフで時間ごとに表示され、“痛みノート”で管理できるので頭痛持ちには必須。

#低気圧性頭痛、気圧変調性頭痛

最近増えているという頭痛の症例。ずきんずきんという痛みで偏頭痛に近い症状がある。

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