(中)再推薦 2018年登録 間に合うか

 「最短かつ確実な登録を目指すための選択と理解してほしい」。今夏の世界文化遺産登録を目指していた「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」(本県、熊本県の14資産)の推薦取り下げについて、県世界遺産登録推進課の岩田正嗣課長は話す。

 国際記念物遺跡会議(イコモス)は推薦の取り下げがない限り、7月の世界遺産委員会が終了するまで推薦国に助言ができない。「速やかに推薦を取り下げ、一刻も早くイコモスの助言を受けて推薦書を見直すことが最善」(文化庁)との判断だ。

 2017年の審査には、「宗像・沖ノ島の関連遺産群」(福岡県)の推薦が決定済み。県は最短となる18年の登録を目指すが、まずは時間との戦いとなる。

 18年の国内推薦候補になるには、ことし3月末までに推薦書原案を文化庁に提出し、文化審議会のヒアリングを経て、7月ごろの同審議会で再推薦の承認を得る必要がある。県は既に推薦書見直しに着手。近くイコモスとアドバイザー契約を結び、助言を受けながら急ピッチで内容を練り上げていく考えだ。

 だが、文化審議会関係者は「教会建築メーンから禁教期の歴史中心に内容を大転換しないといけない。簡単ではない」と心配する。さらに、イコモスから禁教期の資産について追加や範囲拡大を求められた場合は、資産の調査研究や新たな文化財指定が必要になることもあり得る。文化庁幹部は「18年に間に合うかどうかはイコモス次第だ」と漏らす。

 3月末までに推薦書原案を提出できても、その後は1国1枠の推薦枠をめぐり「北海道・北東北の縄文遺跡群」(青森など4県)「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」(新潟県)「百舌鳥・古市古墳群」(大阪府)との競合になりそうだ。

 大阪府の担当者は「教会群が出てくれば大変な強敵。われわれは18年登録を目標に努力し、準備してきた。譲るつもりはない」と警戒する。文化庁は「あくまでも白紙の状態から熟度の高い候補を選ぶ」と強調する。

 政府関係者は「教会群の価値が他候補を上回っているのは変わらない」としつつも、「日本は今回の件で今年の推薦枠を損した。今度こそしっかりやらないと思わぬ横やりが入りかねない」と忠告する。岩田課長は「2年後の登録を実現するために推薦取り下げを決断した。何としてもやり遂げなければ」と決意を示す。

(2016年02月11日掲載)

今夏の登録を目指していた「長崎の教会群」をアピールする県庁の看板=長崎市

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