DeNA山崎康トップ、阪神躍進のブルペン…K/BBで紐解く投手の安定感【セ編】

DeNA・山崎康晃【写真:荒川祐史】

マイコラス圧巻、セ・リーグ先発上位3人はパ1位の岸を凌ぐ

 奪三振数を与四球数で割ったK/BBを調べると、今季どの投手が優秀だったかが見えてくる。奪三振数(K)を与四球数(BB)で割った単純な数字だが、MLBでは重要な指標とされている。

 セイバーメトリクスでは「本塁打以外の安打は偶然の産物」という考え方がある。内外野へ飛んだ打球が安打になる確率(BABIP)は、平均すればどの投手でも3割前後に落ち着くことが統計で分かっているからだ。投手が意識して被打率を3割から下げるのが不可能だとすれば、被本塁打が少なく、奪三振が多く、与四球が少ない投手が優秀ということになる。K/BBが重視されるのはこのためだ。

 セ・リーグの投手陣を見ていこう。

○先発投手(規定投球回数以上)
1マイコラス(巨)8.13(奪三振187与四球23)
2秋山拓巳(神)7.69(奪三振123与四球16)
3菅野智之(巨)5.52(奪三振171与四球31)
4メッセンジャー(神)3.52(奪三振155与四球44)
5野村祐輔(広)2.79(奪三振106与四球38)
6今永昇太(De)2.69(奪三振140与四球52)
7大瀬良大地(広)2.53(奪三振109与四球43)
8田口麗斗(巨)2.49(奪三振122与四球49)
9大野雄大(中)2.29(奪三振117与四球51)
10井納翔一(De)2.02(奪三振93与四球46)
11ブキャナン(ヤ)2.00(奪三振112与四球56)
12バルデス(中)1.77(奪三振83与四球47)

 今季奪三振王に輝いた巨人のマイコラスが抜群だった。パの先発投手でK/BBが最も優秀だった楽天・岸孝之の4.97と比較しても、マイコラスの凄さがわかるだろう。マイコラスの与四球数はNPB1年目の2015年から3年連続で23個だが、奪三振数が107、84、187と今季急増した。もともと制球力は優秀だったが、それに加えて三振を奪える球種を覚えたことでK/BBが急上昇した。MLBが彼に注目したのもこの部分だっただろう。

 2位の阪神・秋山も驚くべき数字だ。秋山はもともとK/BBが非常に優秀な投手だったが、これまでシーズン通してローテを維持することができなかった。ローテを守り抜いた今年、ようやく実力を発揮できた。

 3位の菅野もパ1位の岸を上回っている。先発投手陣に限定すれば、セ・リーグの方が投球内容はよかったと言えるだろう。

阪神ブルペンが驚異の安定感、リーグ2連覇の広島は…

○救援投手10傑(40試合以上登板)
1山崎康晃(De)6.46(奪三振84与四球13)
2桑原謙太朗(神)6.30(奪三振63与四球10)
3ドリス(神)5.00(奪三振85与四球17)
4石山泰稚(ヤ)4.47(奪三振76与四球17)
5マシソン(巨)4.39(奪三振79与四球18)
6砂田毅樹(De)3.77(奪三振49与四球13)
7ルーキ(ヤ)3.68(奪三振70与四球19)
8マテオ(神)3.65(奪三振62与四球17)
9高橋聡文(神)3.64(奪三振51与四球14)
10秋吉亮(ヤ)3.55(奪三振39与四球11)

 DeNAの守護神・山崎康が1位だった。今季は一時期クローザーからセットアッパーに配置転換されたが、シーズン後半に復帰。年間を通じてK/BBが崩れなかったことが大きい。

 2位に桑原、3位にドリス、8位にマテオ、9位に高橋聡と阪神勢が入っている。今季2位に入った阪神の強みは、この安定感のある救援投手陣だった。

 リーグ2連覇を飾った広島からは1人も10傑入りしなかった。広島は一岡竜司の2.90(奪三振58与四球20)が最高。救援投手陣はやや安定感に欠けていたと言えよう。中日は又吉克樹の2.17(78奪三振78与四球36)が最高だったことからも、中継ぎ陣に課題があったことが伺える。

 K/BBは、ベテランになると奪三振数が減って下落する傾向にある。このランキングでも上位には働き盛りの投手が並んでいる。

 来季はこのランキングにどんな新しい投手が食い込むだろうか。

(Full-Count編集部)

© 株式会社Creative2