《上野》博物学者 南方熊楠の生誕150周年記念展、国立科学博物館で開催中

南方熊楠が植物や菌類などの採集・保存に使った道具

 和歌山県出身の博物学者 南方熊楠(みなかたくまぐす)の生誕150周年を記念した展覧会「南方熊楠―100年早かった智の人」が来年3月4日まで、国立科学博物館(台東区上野)で開催されています。

 南方熊楠は、明治時代から昭和初期にかけ、自然史から民俗学まで幅広い分野を研究した在野の学者です。特に菌類(カビ、キノコ、酵母)と変形菌類(粘菌)の採取・研究には生涯を通じて取り組みました。

 今回の展覧会では、新たに発見された「菌類図譜」36点が展示されています。「菌類図譜」とは、採取した菌類を水彩画で実物大に描写し、また実物をスライスなどして貼り付け、採取地や形態、色、匂いなどの特徴を記載したもの。今回の図譜は、ヒダナシタケに分類される菌類が多く、色づけされたイラストに英文で特徴が書き加えられています。

菌類図譜(第二集)

 会場では、熊楠の生い立ちから、アメリカやロンドンへの留学時代、帰国後の和歌山県での活躍について、研究分野ごとに、膨大な抜書(文献からの筆写ノート)、日記、書簡、標本、参考書籍などで紹介されています。

 植物や菌類の採集に使った道具や収集した標本、人文系分野での研究として「十二支」についての考察した原稿など、コンピューターもなかった時代に、多岐にわたった熊楠の情報収集能力や研究を興味深く見学できます。

熊楠の使っていた野冊(やさつ)ー採集した植物を現地で押し葉標本にするための道具
熊楠がアメリカ留学時代から使用していた携帯用顕微鏡のレプリカ

 日常生活からはちょっと遠い存在の展覧会のように思うかもしれませんが、実はそうでもありません。博物館の名誉研究員 萩原博光さんは「変形菌は公園の木々や落ち葉などで、簡単に見つけることができます。親子で見つけると楽しいですよ。大人でも収集に夢中になっている人もいて、意外に関心を持つ人が多いんです」と話してくれました。

変形菌「アオウツボホコリ」。熊楠が神社の老木株に生育するのを発見した新種で、展覧会では、菌がルーペで観察できます

 パンダで話題の上野ですが、科学博物館にも立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

会場の入り口。正面の円形テーブルは熊楠の頭の中をイメージし、変形菌の絵曼荼羅をホログラムで表現した立体画や書簡、日記、菌類図譜などが展示されています

南方熊楠―100年早かった智の人

会場:国立科学博物館(台東区上野公園7-20)

会期:2018年3月4日(日)まで

開館時間:午前9時~午後5時(金、土は午後8時まで、入館は閉館時刻の30分前まで)

休館日:毎週月曜日、12月28日(木)~1月1日(月)、1月9日(火) ただし、1月8日(月)と2月12日(月)は開館

入館料:一般・大学生620円/高校生以下及び65歳以上無料

詳細は http://www.kahaku.go.jp/

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