古賀オールの東京工場では、原コイルに装着されている「コイル内周リング」を収納する可動式治具を自前で製作した。
可動式「内周リング」
普段は原コイルヤードのデッドスペースに固定配置し、開梱したコイルから外した内周リングを縦に積み重ねて収納。一定量が集まるとクレーン下まで移動し、もともと装備されているワイヤをクレーンの吊フックに引っ掛けてスクラップとして搬出する。
装置はキャスター付なので人の手で楽に移動できる。縦に積むので一度に数多くのリングを重ねられ、コイルヤード内に散らばらず、片づけ作業も短時間でできるのが特長だ。
内周リングは、原コイル輸送の際、コイル内周面にキズ付着やコイルつぶれなどを防ぐ鋼製プロテクター。使用済みリングはスクラップ処理される。
結束バンドを「コイル状に成形」
同じコイル梱包資材のベーリングフープ(結束バンド)も、使用が終わればスクラップとなるが、その使用済みバンドは「コイリングユニット」によってコンパクトなコイル状に成形される。
バンドの処理は、現場作業者が手足を使って何重にも折り曲げて嵩(かさ)を小さくするのが一般的だが、長さがある分、時間が掛かるし万一の跳ね返りなど危険も伴う。
コイリングユニット装置を使えば、入口ガイドにバンドをセットしボタンを押すだけで一瞬にして小コイルに成形される。大幅に時間短縮でき、労務負担も危険性も無く、しかも場所も取らない。
「高速シャッター」で時短
現場の作業時間短縮と作業者の省力化への取り組みの一環としては、高速シートシャッターの採用促進および電動式コイル搬送台車の無監視移動比率拡大も挙げられる。
鋼製重量シャッターに比べて高速シートシャッターは昇降スピードが大幅に速い。
サイズや型式にもよるが、たとえば重量シャッターが開閉に計数分を要するのに対し、高速シートシャッターは数秒~十数秒。
運河に面した工場では外気や塵、埃の吹き込み抑制、結露防止や塩害対策、万一の際の耐火…などのためにシャッターは開けっ放しにはできない。一方でコイル搬入や棟間台車の行き来などで頻繁な開閉が伴い、作業効率を向上する上で高速シートシャッターは有効だ。このほど東北支店・工場(宮城県白石市)で撤去した高速シートシャッターを、東京第2工場に移設し、リユース。作業時間短縮にさっそく効果を上げている。
「コイル台車」を無監視操業
コイル搬送に使用する電動台車についても、移動中ずっと人がリモコンを握っておらず、可動中に別の作業ができるよう、無監視での可動比率を高めた。
ただ、万一の事故やトラブル発生も想定し、完全無人操業にはせず、不測の際にはすぐに担当者が急停止できる仕様にしてある。
一つ一つは現場における作業効率化、省力・省人化、業務時短、安全対策…の小さな改善事例だが、その積み上げと相乗効果によって着実にムリ・ムダ・ムラを省き、品質・納期面での顧客サービスを高められる「強い現場力」が備わる。
大事なのは「どうすれば現状よりももっと良くなるかの『気づき』であり、気づいたら即座に改善につなげる『実践』であり、そこで満足せずにちゅうちょなく次の改良を目指そうとする『風土』づくり」である。
まさに〝継続は力〟なり。3年後、5年後に「優勝劣敗」の差になって現れる。(太田 一郎)