「さらによい報告を」

 「九州にタイトルを持ち帰れたことが何よりうれしい」-佐世保市出身の将棋プロ棋士、深浦康市さん(現九段)がこんな言葉で地元のファンを感激させてくれたのは2007年の9月▲初めてのタイトルとなる「王位」を羽生善治さんから奪取した時のことだ。奨励会での修業時分から東京で暮らし、当時もれっきとした練馬区民、それでも「持ち帰る」…▲ふるさとを離れて活躍する人の口から思いがけなく発せられる長崎への思いは、いつだってうれしい。その頃担当していた小さなコラムに「この一言を聞けただけでも、対局場に足を運んだかいがあった」と記した▲深浦さんの言葉からちょうど10年。深浦門下で対馬市出身の佐々木大地四段(22)が先週の対局で王位戦の予選を突破し、挑戦者を決めるリーグ戦への進出を決めた。くしくも師の初タイトルと同じ棋戦▲秋にインタビューに出向いて、長崎への思いを聞いたばかりだった。新たなリーグ入りの切符はたった8枚。トーナメント表の山の一番低い所からタイトル経験者を含む5人を見事に負かした▲お祝いのメールを送ると〈…更に良い報告ができるよう精進いたします〉と、とても丁寧な返信をもらった。難敵が待ち受ける次の舞台での飛躍を期して、収穫づくめのプロ2年目が暮れてゆく。(智)

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