100年前の「第九」アジア初演を再現 徳島・鳴門

 第1次世界大戦中に徳島県鳴門市大麻町にあった板東俘虜(ふりょ)収容所で、ベートーベンの「第九」がアジアで初演されてからちょうど100年となる来年6月1日、収容所跡に近い市ドイツ館(同市大麻町)前で「よみがえる『第九』演奏会」が開かれる。100年前と同じ男性のみの出演者で様子を再現するほか、収容されていたドイツ人捕虜の子孫も参加。1世紀を経て「バンドー」の地に第九を響き渡らせる。市の「第九」アジア初演100周年記念事業の一環。

 「よみがえる—」は1日午後6時半、開演する。演奏はテレマン室内オーケストラ(大阪市)の46人が担い、指揮者は延原武春さん=日本テレマン協会=が務める。ソリストとしてソプラノパートに鳴門教育大教授の頃安利秀さん、テノールに鳴門市出身の米澤傑さんら4人が出演。認定NPO法人鳴門「第九」を歌う会など計80人が合唱する。

 初演80周年を記念した20年前にも「よみがえる—」が企画され、収容所跡地で開かれた。今回は、市が跡地の国史跡指定を目指しており、重いテントや椅子で傷つけないよう、市ドイツ館前での実施となった。

 毎年6月に市文化会館(同市撫養町)で開いている「第九」交響曲演奏会は来年、2日間にわたって開く。2日は午後6時、3日は同1時に開演する。

 例年は県内外から約600人が参加している。来年はアジア初演の地で100年を祝おうとドイツ、中国、米国から7団体、国内から66団体の計1233人(27日時点)が集まり、2日間に分けた。

 全日本「第九を歌う会」連合会の亀井俊明名誉会長(74)=同市撫養町林崎=は「演奏会の参加者が増えたのは、第九アジア初演の地・鳴門への期待の現れだと思う。この機会に多くの人と平和の願いを込めて歌い上げたい」と話している。

    ◆ 鳴門市は、ベートーベン「第九」のアジア初演100周年を記念したロゴマーク=写真=を作った。市はイベントのチラシなどに活用して「鳴門の第九」を広くPRする。

 第九の「9」と音楽をイメージし、1917年に板東俘虜収容所で開かれた演奏会のプログラムのデザインを基にアレンジした。カラー版はドイツ国旗と同じ黒と赤、黄の3色を使用した。

 第九をPRする目的であれば、市に申請すると、ロゴマークを使用することができる。

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