【新社長】〈坂野興業・坂野晋太郎氏〉線材製品事業・異形鉄筋事業、さらに深掘り 〝家業〟から〝企業経営〟への転換推進

 9月に創業80年以上の歴史をもつ大手老舗線材製品問屋、坂野興業の社長に就任した坂野晋太郎氏。「父である故坂野富雄社長が生前にやり残したことが私と当社の大きな目標。これからも取引先各社から協力を賜って父の夢を継いでいきたい」と社業発展に向けて抱負を語る。

 同社は2015年に大番頭だった恩田功氏と坂野富雄社長が立て続けに他界して苦境に立たされたが、残された社員の踏ん張り、取引先各社からの支援もあり、同社はその後も業容を拡大し続けてきた。

 晋太郎氏は2年前の取締役就任後から社内の改革を少しずつ進めてきた。世代交代に伴い、「〝家業〟から〝企業〟への転換を進めていきたい」と強調する。

坂野興業・坂野社長

 インフラ面では本社の会議室や応接室、事務所スペースをリフォームして労働環境の改善を図るとともに、今夏には浦安第二倉庫営業所で天井クレーンを更新した。「今後は浦安第一倉庫営業所の有効活用を進めていきたい」としている。

 また社内基盤の強化として、人材の若返りも進めてきた。「経験豊富だったベテランの営業マンが引退したことで、経験値の少ない人材が増えた課題もあるが、社員が若返ったことで柔軟性や機動性、フットワークといった点ではパフォーマンスが良くなった利点もある」としている。

 同社は1974年に静岡営業所を開設して溶接金網事業にも参入。また新日鉄住金と共同開発した異形バーインコイル・D6を一手に扱う異形鉄筋の最大手業者でもある。

「線材製品事業と異形鉄筋事業、この2本柱の事業を核にして、信頼、品質、デリバリー、顧客サービスなど、あらゆる分野でより一層の深化を進めていきたい。先代社長がよく口にしていた〝誠実〟、〝勤勉〟、〝謙虚〟、〝忍耐〟を忘れずに、線材製品と異形鉄筋の『坂野興業』という信用、ブランドをさらに広げていきたい」。(伊藤 健)

略歴

 坂野 晋太郎氏(さかの・しんたろう)2015年取締役、16年専務。72(昭47)年11月28日生まれ。好きな言葉は、山本五十六の「やってみて、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かず」。趣味は自転車とダンス。

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