<レスリング>【2017年全日本選手権・特集】“世界王者キラー”、国内でも輝く…男子グレコローマン67kg級・下山田培(警視庁)

(文=斉藤葵、撮影=矢吹建夫)

得意のグラウンド技を駆使し、全日本を初制覇した下山田培(警視庁)

 全日本選手権の男子グレコローマン67kg級は、11月のデーブ・シュルツ国際大会(米国)で世界王者を破って優勝した下山田培(警視庁)が、決勝で全日本選抜選手権2位の川瀬克祥(シリウス)に鮮やかな逆転勝ちをおさめ、全日本初タイトルを手にした。

 決勝戦にまさるとも劣らないハイライトとなったのは準決勝だ。日体大~警視庁と同じ道を歩んだ同期生で、今年の世界選手権66kg級代表の高橋昭五(警視庁)を破る金星を挙げた。「(実績では先を行っていた)高橋に散々いじられてきた分、メンタルが鍛えられた。喧嘩腰でやってやろう、という気持ちで臨んで、全部を出し切った。自分の中で一番面白い試合だったと思っている」。

 高橋を破った勢いは止まらなかった。決勝は0−5と追う展開となったが、終盤に豪快なリフトが決まって鮮やかな逆転勝ちだった。

 「デーブ・シュルツ国際大会の決勝で世界チャンピオンに勝つことができ、モチベーションが上がり、絶対に負けられないという思いが今回の優勝のきっかけとなった。川瀬先輩にはここのところずっと負け続けていたので、久しぶりに勝てて嬉しかった」。

 パーテルポジションの選択が復活した新ルールも、下山田にとっては追い風となった。「自分の得意とするグラウンド技を展開できる。この優勝をきっかけに、もっと上を目指していきたい。冬の全日本チームの海外遠征は、(推薦などではなく)初めて自分で手にする国際大会出場になるので、しっかり闘ってきたい」。

 海外での実績が国内のそれより上回っていた下山田。ポテンシャルは元々高く、2015年にはのちにリオデジャネイロ・オリンピック59㎏級銀メダリストとなる太田忍(ALSOK)を破って学生王者になるなど(66kg級)、若手のホープとして期待されていた。

 2020年東京オリンピックに向け、「来年からは意識をもっと高く持たないといけない」と、全日本優勝にもおごらず、襟を正していた。

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