寿地区で炊き出し 横浜

 路上生活者や独居高齢者らの年越しを支援する恒例の「寿越冬闘争」が28日、横浜市中区の寿地区で始まった。30日から炊き出しを行い、年越しそばや餅つきで年の瀬や正月気分を味わってもらう。夜間は野宿者に声を掛けながら温かいスープを配り、行政機関の閉庁期間中に支援を必要とする人を孤立させない地道な“闘い”を続けてゆく。

 寿越冬闘争は、寿日雇労働者組合や寿支援者交流会、夜間パトロール団体など7団体で構成する実行委員会が主催し、今年で44回目を迎えた。

 炊き出しなどの拠点となる寿公園ではテントが張られ、来年1月3日まで司法書士や看護師らが無料相談を受け付ける。期間中は芝居の上演やカラオケ大会、囲碁・将棋大会など多彩なイベントも企画されている。

 28日朝は全国から寄付された衣類や日用品を格安で販売するバザーが催され、桜美林大の学生19人も加わった。初めて参加した2年の学生(20)は「ちょっと怖い街と聞いていたが、話すと楽しい人たちが多くて偏見をなくすことができた。また協力したい」と笑顔で話した。

 市健康福祉局の援護対策担当によると、市内の路上生活者は531人(今年1月の概数調査)で、ほぼ横ばい傾向。年末年始を生活自立支援施設「はまかぜ」(中区寿町)で過ごす人たちの受け付けが同日行われたが、午前中に訪れたのは例年並みの約40人。その多くが結核健診を受けるだけにとどまったという。

 路上生活者がまとまって野宿している横浜スタジアムでは、2020年の東京五輪を見据えた増築・改修工事が始まっている。市の担当者は「工事の進捗(しんちょく)によるが、今のところは立ち退いてもらうことは考えていない」とする。

 実行委事務局長(46)は「五輪関連の再開発が続く中で、東京の明治公園などでは野宿者の排除が起きている。横浜でも路上生活者が不安にならないように注視したい」と話した。

 日雇い労働者の街だった寿地区で1974年、オイルショックによる不況で横浜港に貨物船が入らず、仕事にあぶれた港湾労働者を支援したのが寿越冬闘争の始まり。実行委では年末年始の活動に加わるボランティアを募っている。問い合わせは事務局の寿生活館電話045(641)5599。

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