患者癒やす「勤務犬」希望与えて3年 聖マリアンナ医科大病院

 川崎市宮前区の聖マリアンナ医科大学病院で、総合病院で唯一の「勤務犬」として働くスタンダードプードルのミカ(7歳・雄)が、戌(いぬ)年の2018年に着任から丸3年を迎える。入院患者に癒やしを与え、退院した人からはお礼の手紙や年賀状も届く人気者。人間ならベテランの域に差し掛かる年頃で、今年も活躍が期待されている。

 ミカは10年3月生まれ。社会福祉法人の日本介助犬協会(横浜市)で訓練を受けた。入院患者の癒やしになる犬を探していた同病院の長江秀樹医師(43)の照会を受け、同協会は多くの人と接することが好きなミカの性格が動物介在療法に向いていると判断し、同病院での勤務が決定。15年4月に入職式を行った。同協会との共同事業としてミカが貸与されている。

 発端は12年、白血病で長期入院し、犬との触れ合いを望んでいた女子中学生の要望を受けたこと。県立こども医療センターで既に活躍していた犬「ベイリー」を一時的に招き、中学生や周りの患者に喜ばれた経緯がある。総合病院でも活躍が見込めると「勤務犬」ミカの誕生につながった。

 ミカは毎週月曜と水曜に多くの病棟を訪れ、入院患者と触れ合う。内科病棟の男性(60)は「おとなしくてとてもいい子。癒やされる」とミカの頭をなでた。個室に入院中の女性(86)は「ミカちゃーん、大好き」と抱きしめ、「私もリハビリ頑張らなくちゃ」と笑顔を見せた。産婦人科病棟では出産を控えた女性らに愛され、小児科病棟では手術を怖がる子の不安を和らげ、手術室で麻酔がかかるまで付き添う。

 長江医師は「患者はミカにやる気や希望をもらう。普段は歩かない人が、ミカと一緒だと歩こうとする」と評する。患者の笑顔が看護師の笑顔を生み「笑顔の循環が生まれる」という。

 ミカに指示を出すハンドラーの佐野政子看護師長は「看護師と連携し、患者さんがミカに良い印象を持つよう立ち位置や近づけ方に注意し、安全、安心を守るようにしている」と話す。

 戌年の今年の目標として長江医師は、「ミカに『勤務犬』のパイオニアとして活躍してもらいながら、動物介在療法の動きを全国の病院にも広げていきたい」と意気込み、傍らのミカにほほ笑みかけた。

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