巨匠清方描く新春の風情 鎌倉の記念美術館

 近代日本画の巨匠鏑木清方(1878〜1972年)が描いた新春の風情や、正月を祝う清方の心情を随筆から紹介する企画展「清方と祝う正月」が、鎌倉市鏑木清方記念美術館(同市雪ノ下)で開かれている。1月14日まで。

 明治初期、東京・神田に生まれた清方は、氏神様や七福神に詣でたり、書き初めをしたりして正月の習わしを楽しんだ。随筆には明治から昭和にかけての東京の風物を書き残している。同美術館は「随筆から清方の人となりを身近に感じられる」と話す。

 1934年ごろの作品「歳旦」は、家々を訪れて延命長寿や家門繁栄を歌い踊る2人組の万歳師を描いた。昭和前期ごろまでは新春の風物詩で、清方は随筆で「都(みやこ)に春を齎(もた)らす春の使のやうに思はれる」と記した。

 恒例の押絵羽子板も並ぶ。明治の庶民生活や流行を題材にした「明治風俗十二ケ月」を、押絵師の永井周山が立体的な羽子板にした。羽子板と絵を比べて鑑賞できる。

 清方は文芸雑誌の付録も手掛けた。新年を祝うすごろくは色鮮やかで人気が高かった。「時代美人風俗雙六」は歌舞伎や浄瑠璃に登場する女性たちをあでやかに描いている。

 4日から開館し、午前9時〜午後5時。一般200円、小中学生100円。問い合わせは、同美術館電話0467(23)6405。

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