被写体は「子育て狛犬」 岩間町の主婦写真家・山田木綿子さん 横浜市保土ケ谷区

カメラや歯ブラシ、御朱印帳など撮影七つ道具を手に撮影に出かける

 今年の干支である戌にちなんだユニークな取り組みをしている人物を紹介する――。岩間町に暮らす主婦・山田木綿子さん(55)。5年前、友人と訪れた福島県裏磐梯の神社でのある出会いがその後を決めた。覗き込むカメラのファインダーには神社や寺院にある狛犬の姿。その胸元や足元には子犬がいる。主婦カメラマンが追い続けている被写体は「子育て中の狛犬」だ。

 「これは、一生懸命おっぱいを飲んでるの。可愛いでしょ。こっちはお父さんが子どもを背中に乗せてあやしているの。狛犬の世界でも『育メン』の時代なのね」。これまで撮りためた作品を手に取り、発する一言ひと言に深い愛情を感じさせる。

 もともとは自宅で飼う犬の写真をデジタルカメラで撮影するごくごく普通の愛犬家だったが、自身が撮った写真の仕上がりに納得がいかず、友人に誘われ区が主催した写真講座を受講。講師の写真に感銘を受け、講座修了後もその講師が主宰する教室に通い写真の奥深い世界にのめり込んでいった。

 教室の撮影会で訪れた裏磐梯の神社で狛犬にフォーカスを絞るとファインダー越しに見えた表情に魅了された。「優しい顔をしてるんだな」――。目線を少し下に向けると、そこには子どもの狛犬の姿があった。自身も2人の娘の母親。「その瞬間、ぐっと身近に感じちゃったの」。以来、被写体は「子育て狛犬」一本になった。

撮影旅には歯ブラシ持参

 神社・寺院は数多くあるが「子を抱く狛犬」は数少ない。「一生涯の被写体」を求め、出掛けた先々で神社・寺院を訪れる。

 撮影旅行の時、撮影道具とともに持参するものがある。歯ブラシだ。自分の歯を磨くためのものとは違うもう一本は何と狛犬用。「鼻の穴にね、虫が巣を作っちゃうの。せっかくだから、きれいに撮ってあげたいじゃない」

 今年も各地の神社・寺院を巡る予定だ。愛用のカメラと愛情たっぷりの歯ブラシを手にして。

子どもに授乳しながら頭を撫でる母狛犬は「お仕事中」。目線は門前を向き、悪気が入ってこないかにらみを利かせている

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