井手口が移籍?リーズってこんなチーム

ガンバ大阪のMF井手口陽介がリーズに移籍するとみられている。

リーズといえばかつてはチャンピオンズリーグにも出場するなどプレミアリーグでも上位争いをしていたが、近年はチャンピオンシップ(2部相当)に落ち着いてしまいイタリア人オーナーのアンドレア・ラドリツァーニの元で再建が図られている。

果たしてどんなクラブなのだろうか?

リーズの歴史

リーズ・ユナイテッドは1919年に設立された。イングランド北部リーズをホームタウンとしている。リーズ・シティが不正疑惑によりFAから抹消されたのを引き継ぐ形で興されたのだという。

1991-92シーズンにファースト・ディヴィジョンを優勝している。プレミアリーグ開始前の最後の1部リーグ開催での栄光であった。

ロゴマークは黄色と青を基調にしており中心にあるのは白いバラだ。これはヨーク家の家紋であり、リーズという街を代表するものである。そのためにクラブの愛称も「ホワイツ」と呼ばれている。ヨーク家といえばランカスター家との「薔薇戦争」を世界史で勉強した方も多いだろう。

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ヤング・リーズ

リーズと言えばハリー・キューウェル、マーク・ヴィドゥカを軸にしたヤング・リーズ時代を思い浮かべるファンは多いだろう。

デイヴィッド・オレアリー監督の元、当時20代前半だったメンバーを中心に若くて勢いがあったチームだ。その中からリオ・ファーディナンド、ロビー・キーン、アラン・スミスなどがブレイクを果たしビッグクラブへと旅立っていった。

プレミアリーグで優勝を争っていたチームは1999-00シーズンに3位に入ると、2000-01シーズンにはチャンピオンズリーグ出場を果たした。グループリーグではミラン、バルセロナと同組を2位で勝ち抜け、2次リーグでもレアル・マドリー、ラツィオと同組を2位で突破した。

結果的に準決勝で同じく当時調子の良かったバレンシアの前に敗退するが、リーズの印象はとても強烈なものだった。

財政難に陥り失速

しかし、栄光は長く続かなかった。大型の補強をしたツケで財政難に陥ったリーズは2002-03シーズンに15位、2003-04シーズンに19位と落ち込みついにチャンピオンシップ降格となってしまった。さらに、2006-07シーズンはチャンピオンシップで最下位となりリーグワン(3部相当)へ降格となっている。

その後は2012年にドバイのGFHキャピタルが買収、さらに2014年にイタリアのカリアリも経営するマッシモ・チェリーノが買収とクラブは次々に違うオーナーの手に渡った。チェリーノ会長の元ではクラブの財政難があぶりだされ、選手の給与を待ってもらうこともあったという。

昨シーズンの順位はチャンピオンシップ7位。最後の最後でプレーオフ圏内を逃し今季は昇格へ向けて期待がかかるシーズンである。とはいえ、7位という成績はここ10年では最高の成績である。今季も12月30日時点で5位とプレーオフ圏内へ向けて順調だ。

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現在のリーズは?

現在のリーズは冒頭にも紹介したアンドレア・ラドリツァーニ会長の元で再起が図られている。今年チームを買収したラドリツァーニは2016年5月からチームの株式購入のための交渉を進め、12月に50%の株式を取得。今年5月にようやく単独オーナーとなり、マッシモ・チェリーノから株式をすべて買い取った。

今季はそれに伴ってトーマス・クリスティアンセンを監督に据えている。バルセロナ下部組織あがりのクリスティアンセンはバルサでは出場機会はなくデンマークなどを経てキャリアの晩年ブンデスリーガのボーフムで得点を量産し再注目を浴びた。元スペイン代表ではあるが、ドイツ時代の印象で覚えているファンのほうが多いだろう。

ラドリツァーニは彼を監督に据えた理由として、レスターやハダースフィールドのように監督、クラブ、サポーターと一体になればプレミアリーグへ昇格しあるいは良い成績を残せるだろうと考えているようだ。

なお、元日本代表の藤田俊哉氏も今季よりアジア地域のヘッド・オブ・フットボール・デヴェロップメントという役職についており、強化部長の補佐役ということであり、日本人選手の発掘は藤田由縁のものなのかもしれない。

井手口のライバル、チームメイトは?

さて、イングランド2部に移籍する井手口だが出場機会などはどうなると考えられるだろうか?

かつてポーツマスで川口能活がプレーするなど日本人もこれまで何人か英2部の舞台では戦ってきた。イングランドの2部は世界でも10本の指に入るリーグであり、諸外国の1部リーグよりもレベルが高くまた予算も大きい。そのために各国の代表選手がチームにはひしめき合っており、プレミアリーグへの挑戦を待ちわびている。

リーズの予算も日本円にしておよそ70億円と言われている。一般的なJ2のクラブが10億円に満たない予算であることを考えるとその差が大きいことがわかるだろう。また、J1最高の売上高を誇る浦和レッズでも2016年におよそ66億円である。

では、そんな最高の2部リーグで井手口がライバルとなりそうな選手は誰だろうか?

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ライバルはチームナンバーワンの愛され男?

まず、チームのフォーメーションは4-2-3-1を基本としている。センターハーフでプレーするのであればライバルは下記の選手たちとなる。

ラドリツァーニ会長が売らないと今夏名言した若き才能がMFのロナルド・ヴィエイラ。ギニアビサウで生まれポルトガル、ギニアビサウ、イングランドと3つの代表チームでプレーする資格がある。今のところは2017年のトゥーロン国際にも出場し、イングランドU-20代表でプレーしている。

アフリカ系特有の高い身体能力があり攻守に働くことができる。昨季はリーグ戦34試合出場で1ゴールをあげており、今季もレギュラー格として期待は高い。双子の弟ロマーリオもリーズの下部組織でプレーしている。そう、名前からわかる通り二人の名前は元ブラジル代表のストライカー達から名づけられたものだ。

これ以外にも元オランダ代表MFフルノン・アニタ、アイルランド代表MFユーナン・オケインらがいるが、ヴィエイラの相棒はこちらも22歳と若いカルヴィン・フィリップスが主に務めている。

下部組織あがりのフィリップスは「9歳で初めてエランドロードを訪れた時にチームはトップリーグで戦っていた」といい「クラブがプレミアリーグに戻るのが夢」だと語っている。

仮にトップ下のポジションでプレーすると考えると、そのポジションにはレアル・マドリー下部組織あがりのサムエル・サイスがいる。レアル・マドリーCから這い上がってきた苦労人で26歳ながらレアル・マドリー、アルメリア、ヘタフェ、セビージャ、アトレティコ・マドリーの“Bチーム”でプレー経験がある。昨シーズン、スペイン2部ウエスカでリーグ戦12ゴールをあげ、今季リーズへ引き抜かれた。ドリブル、パスに優れたテクニシャンでウィングでもプレーできる。

このように今のリーズの平均年齢は25、26歳程度と若くその中心は下部組織上がりの選手たちがいる。井手口は現在21歳だが決して若すぎる年ではないのだ。

同じぐらいの年代の若い選手と切磋琢磨しながらプレミアリーグを目指して戦うのは大きな経験になるだろう。ホームであるエランドロードは雰囲気たっぷりのスタジアムであり、素晴らしい環境でプレーできるのも大きい。

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