こま犬に注目 時代、作者で個性いろいろ

 神社などで目にするこま犬。神社や石工により個性もさまざまで、写真を撮って回る愛好家も少なくない。空想上の霊獣で、向かって右の口を「あ」の字に開いたもの(獅子)と、左の「うん」と閉じた「阿吽(あうん)」の一対からなるが、造られた時代や作者の違いなどで特徴が表れるからだ。

 川崎宿の総鎮守として知られる稲毛神社(川崎市川崎区)の青銅像「天地睨(にら)みの狛(こま)犬」は筋肉質で力強い姿が人気だ。平城遷都1300年のマスコット「せんとくん」で有名な彫刻家の籔内左斗司さんの作で、今上天皇の御即位記念として1991年に建立された。

 明治から大正期にかけて名工といわれた溝口(高津区)の石工、内藤慶雲の作品が市内をはじめ横浜や都内に多く残っている。麻生区黒川の汁守神社のものは1882年に造られ、傑作の一つとされる。「あうんともに子を2頭ずつ抱える珍しい作品で、地元の自慢になっている」と大山街道ふるさと館の東原信行さん(69)。

 子や玉ではなく、大砲の砲弾を抱えるのは大戸神社(中原区下小田中)。日露戦争の戦勝記念に1907年に建立された。個性あふれるこま犬。初詣の際に目を向けてみてはいかがだろうか。

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