50人のうち13人は殿堂入りならず 2000安打=「当確」ではない!?

野球殿堂候補者入りした小久保裕紀氏【写真:Getty Images】

2000安打達成者ですでに殿堂入りしているのは…

 今年も野球殿堂入り候補者を選出する時期がやってきた。

「野球殿堂」は、日本の野球界で多大な貢献をした野球人の功績をたたえ、顕彰する制度だ。殿堂入りした野球人は、東京ドームにある野球殿堂博物館内の「野球殿堂」に肖像のレリーフが飾られ、永遠にその功績が語り伝えられる。野球人にとって最高の栄誉と言えよう。

 野球殿堂の表彰制度は、プロ野球選手の場合、プレーヤー部門、エキスパート部門にわかれる。元プロ野球選手はまず、プレーヤー部門で選考対象となる。プレーヤー部門は野球報道歴15年以上の経験を有する記者、ジャーナリストの投票で選出される。

 数字的な基準はないが、かつては、野球殿堂入りの基準は「2000本安打」「200勝」だった。しかし、近年は2000本をクリアする選手が増えて、2000本安打を達成しても「当確」とは言えなくなった。

 50人いる2000本安打達成者の、殿堂入りの状況を見ていこう。「★」が殿堂入り。「候補」は、プレーヤー部門で現在殿堂入り投票の候補者になっていることを示す。「新候補」は今季からの候補者。「現役」は、現役選手。「年限未」は、まだ引退後5年を経過せず、候補になる資格がないことを示す。

1張本勲 3085安打 ★
2野村克也 2901安打 ★
3王貞治 2786安打 ★
4門田博光 2566安打 ★
5衣笠祥雄 2543安打 ★
5福本豊 2543安打 ★
7金本知憲 2539安打 新候補
8立浪和義 2480安打 候補
9長嶋茂雄 2471安打 ★
10土井正博 2452安打
11石井琢朗 2432安打 新候補
12落合博満 2371安打 ★
13川上哲治 2351安打 ★
14山本浩二 2339安打 ★
15榎本喜八 2314安打 ★
16高木守道 2274安打 ★
17山内一弘 2271安打 ★
18大杉勝男 2228安打 ★
19大島康徳 2204安打
20新井貴浩 2178安打 現役
21若松勉 2173安打 ★
22稲葉篤紀 2167安打 年限未
23広瀬叔功 2157安打 ★
23秋山幸二 2157安打 ★
25宮本慎也 2133安打 年限未
26清原和博 2122安打
27小笠原道大 2120安打 年限未
28前田智徳 2119安打 年限未
29谷繁元信 2108安打 年限未
30中村紀洋 2101安打 年限未
31古田敦也 2097安打 ★
32松原誠 2095安打
33松井稼頭央 2084安打 現役
34山崎裕之 2081安打
35藤田平 2064安打
36谷沢健一 2062安打
37江藤慎一 2057安打 ★
37有藤道世 2057安打
39加藤英司 2055安打
40和田一浩 2050安打 年限未
41小久保裕紀 2041安打 新候補
42新井宏昌 2038安打
43阿部慎之助 2036安打 現役
44荒木雅博 2023安打 現役
45野村謙二郎 2020安打 候補
46柴田勲 2018安打
47アレックス・ラミレス 2017安打 年限未
48鳥谷敬 2015安打 現役
49田中幸雄 2012安打
50駒田徳広 2006安打

 殿堂入りしているのは、50人のうちで19人。現役は5人、候補、新候補は合わせて5人、年限未が8人。残る13人は、殿堂入りを逃している。

エキスパート部門で選出される選手も、清原氏は候補から除外

 殿堂入りしていない中で、最も安打数が多いのが土井正博氏。近鉄、西武などで活躍した。土井氏はコーチとしての勤務歴が長い。現役のコーチは候補に選出されないため、選出の機会を逸していた。昨年から中日ドラゴンズの打撃コーチを務めている。

 プレーヤーズ部門で選に漏れた候補には、エキスパート部門で殿堂入りする可能性がある。土井氏はコーチを退任すれば、エキスパート部門で選出されるのではないか。

 土井氏に次いで安打数が多い大島康徳氏は、2000本に加えて2500試合出場も達成しているが、タイトルは本塁打王が1回だけ、ベストナインには1度も選出されていない。こういう部分でアピールが少なかったと思われる。

 これに次ぐ清原和博氏は、一昨年の覚せい剤所持、使用による逮捕、有罪確定によって候補から外された。

 上記3人以外の10人の殿堂入りしていない2000本安打者も、獲得したタイトル数が少ない。松原誠氏は長く大洋ホエールズの中軸打者として活躍していたが、ポジションは三塁手と一塁手。長嶋茂雄、王貞治と完全にポジションが重なっていた、ベストナインにもダイヤモンドグラブ(現ゴールデングラブ)にも1度も選出されていない。同時代に有名選手がいたために、割を食った形だ。

 加藤秀司氏は、首位打者2回、打点王3回、MVPも1回。選出されていない中では抜群の実績だ。同期入団の福本豊氏、山田久志氏とともに阪急の黄金時代を作った。しかし選出されていない。

 野球殿堂は記者の投票で決まる。「プロ野球名球会」のように、明確な数字の基準がないために、どうしても運、不運ができてしまう。

 前述のように、プレーヤー部門で選に漏れた候補には、エキスパート部門での選出の余地がある。今年のエキスパート部門には新井宏昌氏に加え、加藤秀司、柴田勲の両氏が候補に加わった。しかし他の10人は、エキスパート部門の候補にもなっていない。

 野球人の最高の栄誉、野球殿堂入りをめぐっても、人間臭い様々なドラマがあるのだ。今季は、誰がこの栄誉に浴するのだろうか?

(Full-Count編集部)

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