動物愛護センター移転 ブロンズ像もお引っ越し

 「愛ちゃん、これからも見守ってね」−。川崎市動物愛護センター(高津区蟹ケ谷)の入り口に、開設当初から40年以上設置されている柴犬のブロンズ像がある。彫刻家の故井上信道さんの作品で、2018年度末に予定している同センターの移転に伴い、像も一緒に移転先(中原区上平間)へ移されることになった。

 同センターによると、ブロンズ像は同地に「市飼い犬管理センター」(当時)が開設された1974年に市獣医師会から寄贈された。戦後、狂犬病予防のために設置した犬の抑留所から、動物愛護を基本理念とした施設にしていく転換期だった。

 動物愛護センターの小倉充子所長は「現在に比べ、昔は多くの野良犬などが捕獲され、殺処分されていた。動物愛護の精神が根付くまでの道のりを、この像は見守ってきた」と話す。慰霊祭も毎年、ブロンズ像の近くで開かれており、「職員や市民に命を大切にする気持ちを持ち続けてほしい」と、移転後も引き続き設置する。

 制作した井上さんは、横浜美術協会や県美術展の創立に関わり、75年に横浜文化賞を受賞、91年に紺綬褒章を受章。代表作は横浜駅西口の「宇宙と子供たち」、県庁正面玄関の「非核の母子像」などで、2008年に99歳で死去した。生前は同センターの慰霊祭にも出席するなど、動物愛護の活動にも関心を寄せていたという。

 関連資料には、この像に当時の伊藤三郎市長による「愛」の字が刻まれたと記されており、センター職員らは「愛ちゃん」と呼んで親しんでいる。

 

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