平成30年

 地平線というのは一体どこにあるんだろう、誰が決めるんだろう。子どもの頃にそう思い、自転車で地平線を目指して走り続けた-と書いたのは劇作家の寺山修司さんだったろうか。走っても走っても地平線ははるか遠く▲矛盾のように思えるが、誰一人として地平線に到達できないけれど、誰もが地平線の上に立つことはできる。年の区切り、時代の区切りも同じようなものかもしれない▲区切りの前と後で何かが劇的に、がらりと変わるわけではない。地続きなのだが、遠くから-例えば後年から見ると、大地の果てと空とが一線で分けられるように、時代の風景にいつか境界線が引かれるだろう▲ことしは平成30年。「えっ、センパイ、昭和の入社なんですか? マジすか」と、なぜかとがめるように言われるのにも慣れた身だが、確かに人の一生を尺度とすれば、30年とはけっこう分厚い時間の層をなす▲この節目の年を経ると、来年4月末で平成は幕を下ろす。平成とはどんな時代だったのか。何が始まり何が終わったか。折々に振り返り、歳月に線を引く年になるだろう。年の初めに気が早いとは承知しながら▲遠い未来から見るとすれば、私たち一人一人が時代の地平線上に立っている。願わくば上空は青く澄み、地はどうか平らかでありますよう。(徹)

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