「2期目総仕上げへ」黒岩知事に聞く2018年県政

 黒岩祐治知事は年頭に当たり神奈川新聞社のインタビューに応じ、2期目の総仕上げに向け、ヘルスケア・ニューフロンティアなど肝いり施策の成果を形にしていく考えを示した。庁内組織の再編により、子ども施策を推進する意向も示した。

 −2期目に入って2年半たったが、成果は。

 「2020年東京五輪のセーリング競技の県内誘致に成功した。これまで進めてきた横浜・鎌倉・箱根に次ぐ『第4の観光の核づくり』のゴールにもなる。特に大磯は旧伊藤博文邸などが立ち並ぶ地域が明治記念大磯邸園(仮称)として整備されることが決まり、大磯プリンスホテルも大改装を決断してくれた。国家戦略特区を活用した地域限定保育士試験を県が提案して認められ、全国共通の保育士試験も年2回に変わった。『未病』の認知度も向上している。ゴールとまでは言わないが、着実に前に進んだ」 −18年度に注力することは。

 「(県立保健福祉大学に大学院として設置する)ヘルスイノベーションスクールが19年の開学に向けて最終的な準備を着々と進めている。未病コンセプトを世界に発信する力になる。19年ラグビーワールドカップ、20年東京五輪に向けた準備、機運醸成に全力を挙げる」 −18年4月に行う組織再編の意義は。

 「『子ども』がキーワード。6年半前の知事就任時より子どもの貧困や待機児童対策などがクローズアップされている。時代の変化に対応すべく組織を再編し、従来ばらばらだった子ども施策を集中的に取り組むことができる。新しい挑戦だ」 −政策実現の財源確保策は。

 「地方が仕事量に見合った財源を確保できない日本の税財政構造の問題で、予算編成は毎年綱渡りが続いている。県としての歳入増に向けた対策は企業誘致に尽きる。私自身が誘致セミナーなどに出向いてアピールしている。外国企業に向けても、神奈川はヘルスケア・ニューフロンティアに取り組むという旗が明確になっている。特にベトナムはフェスタを開催し、IT企業の進出にもつながった。東京五輪に向けて外国人観光客を受け入れる態勢づくりも進んできている。この部分の拡充は財政的に乗り切る大道だ」 −県の推計では18年を境に人口減に突入する。縮小社会における県の役割は。

 「県全体の大きな方向性を示すのが県の役割。超高齢社会を乗り越えるためのヘルスケア・ニューフロンティアがそれだ。県同等の権限を持つ横浜、川崎、相模原の3政令市を抱えるが、二重行政と感じているものはない。各論で問題があったら一つ一つ解決する。市民、県民のためになるなら協議した上で権限移譲する」 −議会との関係は。

 「連携も緊張感もある。同じ方向を向いて進んでいくのは県民にとって一番良いことだ。テレビ業界出身なので、議会と徹底的に対立したり、職員批判をしたりして華々しく目立つ方法は知っているが、そういう方向はとらない。コミュニケーションを深め、チームを大事にする」 −3期目に挑戦する判断はいつか。

 「まだ判断するかどうかも分からない。とても考える余裕はない。2期目をきれいに仕上げていきたい気持ちが非常に大きい」

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