パクチー「主役の座」 専門店から家庭菜園、男性客も

 パクチーブームが止まらない。サカタのタネ(横浜市都筑区)は2017年、パクチーの新商品2種を発売。横浜のパクチー専門店の草分け的存在「PHAKCHI JO’S(パクチージョーズ)」(同市中区)は17年12月、東京・銀座に2号店を出店した。くせの強い香りで好き嫌いの分かれる香草だが、栄養が豊富でアンチエイジングに効果があるとも言われ、女性がブームをけん引。料理のアクセントをつける脇役から、インパクトのある主役として定着しつつある。

 サカタのタネで販売しているパクチーの絵袋種子は2014年から販売数が大幅に増加、17年5月には前年同期比93%の増加となった。タイ料理などで用いられるイメージが強いが、中国語では「香菜(シャンツァイ)」英語では「コリアンダー」などの名前で呼ばれ、世界中で使われているセリ科の香草だ。

 同社広報宣伝部福田まゆ子さんによると、「その独特な香りから、昔は『カメムシソウ』とも呼ばれ、特に年配の方には敬遠されがち。80年代からのエスニックブームが定着し、東南アジア料理を食べ慣れた若い世代には抵抗なく受け入れられている」。

 同社直営の園芸専門店「ガーデンセンター横浜」では30〜40代の比較的若い世代が繰り返し購入していくことが多いという。「14年ごろからパクチー専門店が登場し、家でもパクチーを食べたいというニーズが高まってきたのでは」と福田さんは分析している。

 パクチーを楽しむ男性も増えてきた、と話すのは「PHAKCHI JO’S」中華街北門店店長の磯貝翼さん。15年の開店当初は来店者の9割が女性だったが、現在は7対3程度にまで男性の比率が増えてきているという。「女性に連れられて来店したことがきっかけになることが多い」。20代から50代まで幅広い年齢層が来店。近年、横浜中華街でもパクチーギョーザなどを出す店が増えたが、同店ではバラエティー豊かなメニューで勝負している。フォーや生春巻きなどが定番だが、根っこを使った天ぷらや、パクチーペーストを使ったピザもおすすめだという。夜はパクチービールや、パクチーを使ったカクテルを楽しみにくる客も多い。

 料理には、国産のパクチーと店内で水耕栽培したものを使用。これからの時期は熊本産や沖縄産が入荷予定だ。水耕栽培は香りがマイルドになるため、海外のものよりも食べやすいという。磯貝さん自身も自宅でパクチーを栽培しており「自宅で食べるならサラダもおすすめ」。

 サカタのタネでは17年4月、土と種と肥料がセットになった「ファミマガーデン 育てるヤクミ『パクチー』」、12月には、香りがマイルドで口当たりのよい「サラサラ細葉パクチー」の種子を発売した。移植を避け、水やりに気を付ければ初心者でも挑戦しやすいという。福田さんは「家庭菜園なら、根っこも調理して食べられる。かわいらしい花も咲くので、栽培の過程も楽しんで」と話している。

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