西武・山川の覚醒なるか、首位打者は?…2018年打撃タイトル大予想【パ編】

西武・山川穂高【写真:編集部】

2年連続タイトル獲得者はいない群雄割拠の時代

 正月も4日、世間は今日から始動する。プロ野球界では2月1日のキャンプインを前に、選手が各地で自主トレを開始した。開幕まで約3か月。少し気は早いが、2018年の打撃タイトルについて予想してみよう。まずは、パ・リーグから。

 過去3年の首位打者、本塁打王、打点王、盗塁王は次の通りだ。

○2015年
首位打者 柳田悠岐(ソ).363
本塁打王 中村剛也(西)37本
打点王 中村剛也(西)124打点
盗塁王 中島卓也(日)34盗塁
○2016年
首位打者 角中勝也(ロ).339
本塁打王 レアード(日)39本
打点王 中田翔(日)110打点
盗塁王 糸井嘉男(オ)金子侑司(西)53盗塁
○2017年
首位打者 秋山翔吾(西).322
本塁打王 デスパイネ(ソ)35本
打点王 デスパイネ(ソ)103打点
盗塁王 西川遥輝(日)39盗塁

 2年連続でタイトルを取った選手はいない。かつてのイチローのようにタイトルを独占する選手がいない、群雄割拠の時代と言えよう。その中で、今季各タイトルはどの選手になるか占ってみよう。

【首位打者】

 本命は西武の秋山翔吾だろう。意外なことに、昨年が初タイトルだったが、安打を左右に打ち分ける広角打法に加えて長打力も増し、リーグ屈指の打者になった。対抗はソフトバンクの柳田悠岐。過去3年の通算打率は、秋山の.326(1755打数572安打)、柳田が.328(1378打数452安打)とわずかに上回っている。柳田も広角打法で知られるが、本塁打、打点部門でも有力候補であり、投手は長打を警戒するため四球が多い。これで調子を崩される可能性はあるだろう。

 この2人に食い込むとすれば、日本ハムの近藤健介か。昨年は231打席で驚異的な.413をマーク。今年は投手が警戒を強めるだろうが、バットコントロールのよさに期待が持てる。ただし、近藤は今季7年目を迎えるが、これまで規定打席に達したのは2015年の1シーズンだけ。経験不足が気になるところだ。

 ベテランのソフトバンク内川聖一も捨てがたい。今年の年男。あと25安打で2000本安打に達するが、衰えは全く見えない。すでに2回首位打者を獲得している。競り合いになれば強みを発揮するだろう。

本命:秋山翔吾(西武)
対抗:柳田悠岐(ソフトバンク)
穴:近藤健介(日本ハム)、内川聖一(ソフトバンク)

群を抜く西武・山川の本塁打率、カギは起用法か

【本塁打王】

 ここ2年は外国人選手が獲得している。ソフトバンクのデスパイネ、日本ハムのレアードは共に今季も健在。有力候補と言えるが、昨年10本塁打以上した打者の本塁打率(本塁打数÷打数)を見ると、意外な選手が1位にくる。

1.山川穂高(西).095(242打数23本塁打)
2.デスパイネ(ソ).073(478打数35本塁打)
3.マレーロ(オ).071(283打数20本塁打)
4.柳田悠岐(ソ).0692(448打数31本塁打)
5.ペーニャ(ロ).0685(219打数15本塁打)

 西武の山川穂高が断トツの1位だ。昨季後半戦だけに限れば、山川は3冠王。シーズンを通してプレーした経験はないが、今季は飛躍の年になるのではないか。

 デスパイネは昨季はシーズンを通して好調を維持した。リーグ屈指の強打者である柳田悠岐と打線を組むことでプレッシャーが分散され、打てるチャンスが増えた。それは柳田も同様。今年も相乗効果が期待できる。

 オリックスのマレーロは、NPB史上10万本塁打目を打って話題となった。いわゆる「持っている」選手であり、大化けする可能性があるだろう。

 実績だけで言えば、西武の中村剛也が断トツだ。過去6回も本塁打王を獲得。山川穂高の成長によって中村へのプレッシャーも分散されることになるだろう。

本命:山川穂高(西武)
対抗:デスパイネ、柳田悠岐(ソフトバンク)
穴:マレーロ(オリックス)
大穴:中村剛也(西武)

【打点王】

 打点王は、長打力があり、多くの打席に立つ選手が有利だ。本塁打王と合わせた2冠獲得もよく見られる。3番、4番を打つ打者が有利で、得点圏打率が重要だ。

○得点圏打率5傑(規定打席以上)
1.柳田悠岐(ソ).379(116打数44安打)
2.銀次(楽).369(130打数48安打)
3.源田壮亮(西).344(157打数54安打)
4.デスパイネ(ソ).326(132打数43安打)
5.秋山翔吾(西).318(132打数42安打)

 ソフトバンクの柳田が1位となった。打率も高く、長打力もあり、勝負強い。打数の少なさが気になるところだが、勝負を避けて歩かされるケースが多いのだろう。柳田のボトルネックは「勝負してもらえない」ことだ。昨季の打点王に同僚のデスパイネが輝いたのは、柳田の後ろを打ったことも大きい。

 打線が強力で出塁数が多いチームの打者は、打点が多くなる。そういう意味では、ソフトバンクに次ぐ強力打線を誇る西武の選手に期待がかかる。秋山は2016年は11本塁打62打点だったが、17年は25本塁打89打点にアップ。長打力が増し、中軸を任せられる打者になってきた。過去3年フル出場しているだけに打席数も多く有力候補だろう。規定打席には達しなかったが、秋山の同僚、山川の得点圏打率は.353(68打数24安打)。フル出場すれば打点王の有力候補になるだろう。

本命:柳田悠岐(ソフトバンク)
対抗:デスパイネ(ソフトバンク)
穴:秋山翔吾、山川穂高(西武)

盗塁はハム西川の独り勝ちの様相も、驚異的成功率を誇るのは…

【盗塁王】

 盗塁王は日本ハムの西川が頭1つ抜けている印象がある。過去4年連続で30盗塁以上で、タイトルも2回獲得。しかも西川は盗塁成功率が高く、出塁率も.378と高い。本命は揺るがないだろう。

○10盗塁以上の選手の盗塁成功率
1中村奨吾(ロ)0.917(11盗塁1盗塁死)
2荻野貴司(ロ)0.897(26盗塁3盗塁死)
3西川遥輝(日)0.886(39盗塁5盗塁死)
4外崎修太 (西)0.885(23盗塁3盗塁死)
5今宮健太(ソ)0.789(15盗塁4盗塁死)

 ロッテの荻野貴司は2010年のデビュー以来、屈指の韋駄天選手として注目されてきたが、故障が非常に多く、一度も規定打席に達したことがない。しかし、通算盗塁成功率も.879(153盗塁21盗塁死)と驚異的だ。33歳だが、西川の対抗馬に推したい。

 そして、盗塁成功率は.787(37盗塁10盗塁死)だが、出塁数が多い西武の源田壮亮にも可能性があるだろう。さらに昨年ブレークした西武の外崎修汰の名前も加えておきたい。

本命:西川遥輝(日本ハム)
対抗:荻野貴司(ロッテ)
穴:源田壮亮、外崎修汰(西武)

 これから9か月後、レギュラーシーズンが終わる頃には、一体誰がタイトル争いを繰り広げているのだろうか。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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