ステンレス鋼板6社、2018年の期待商品

 ステンレスは耐食性、耐熱性、強度や意匠性など様々の特性にすぐれ、自動車、電子・電機、土木・建築、産業機械など多岐にわたる分野で高品質製品の安定生産や技術革新に貢献している。日本のステンレスメーカーは技術・研究開発で世界をリードし、ニッケル系・クロム系・二相系などのステンレスや高合金など多彩な製品を生み出している。今年も「鋼板6社・期待の商品」で、商品開発力と製造技術力が駆使されたラインアップを紹介する。(谷山 恵三)

JFEスチール/JFE443ファミリー3鋼種揃えニーズ対応

 汎用オーステナイト系ステンレス代替のフェライト系ステンレス鋼板の中位品種として「JFE443MT」(21%Cr―0・5%Mo)を開発した。2005年に開発したSUS304代替の「JFE443CT」(21%Cr―0・4%Cu)、16年に開発したSUS316代替の「JFE445M2」(22・5%Cr―1%Mo)の中間に位置する新鋼種だ。

 すでに受注を開始し、中期的に月数百トンの販売を目指す。

 443CT、443MT、445M2という汎用性のある3鋼種を揃えたことで、建築、産機、輸送用車両・機器、厨房機器、生活用品、電気製品など幅広い分野できめ細かくニーズに応えることが可能になった。

 3鋼種を汎用オーステナイト系鋼種の領域をカバーする「JFE443ファミリー」と位置づけ、腰を据えて普及・拡販に取り組む。

日新製鋼/多様な用途に適する広幅箔

 日新製鋼建材・本社製造所の冷延・熱処理設備で生産するステンレス箔は最薄20ミクロンで、板幅600ミリの広幅コイルで生産できるのが強み。日新製鋼・周南製鋼所、衣浦製造所が母材を供給し、製鋼から一貫で材料特性ニーズに柔軟に対応。用途に応じた成分設計により、高強度、耐熱性、非磁性など様々の特性を付与している。技術開発は日新製鋼が行い、強力な商品開発体制を敷いている。

 最近の注力分野の一つが、フレキシブルプリント基板の製造に使用されるマグネットキャリア向け。マグネットキャリアは磁力を持つベースプレートと磁性材料プレートで基板を固定する。この磁性材料プレートに厚み50~200ミクロンの独自鋼種の高強度ステンレス箔を供給している。薄さと平坦度に加えて繰り返し使用に耐える高強度も高く評価されている。

新日鉄住金ステンレス/独自鋼種「FW0」国内市場に投入

 旧住友金属工業の〝フェライト系ステンレスに有効な錫の微量添加〟という知見と旧新日本製鉄の〝高純度フェライト系製造技術〟の組み合わせでレアメタル(Cr、Ni)の節減効果を実現した独自鋼種、「FWシリーズ」のラインナップにFW0(フォワードゼロ、13%Cr)が加わった。

 FW0はFW1(14%Cr)、FW2(16%Cr)で培ったFW技術を発展させ、SUS430に対してより安価でありながらほぼ同等の耐食性を実現し、430をしのぐ高加工性も実現した。

 FW0は高いコスト競争力を武器に「海外汎用品市場でも戦える」鋼種であり、すでに海外家電需要家向けで大口の採用を実現している。今年はFW0を国内市場に本格投入することで、ステンレス市場の裾野の拡大を目指す。新たなステンレス需要の開拓という点でも注目されそうだ。

新日鉄住金/精密加工用「SUS316LH-SR」

 高耐食ニッケル系鋼種のSUS316Lは近年、耐食性や加工後に磁性を帯びにくい点などが評価され、エレクトロニクス分野を中心に採用が増加している。従来はなかったSUS316Lばね材のニーズも増えている。

 エレクトロニクス分野では緻密な高精度部品に加工されることも多く、板厚精度や平坦性に優れ、加工後の変形が抑制される材料が求められる。ステンレス薄板の平坦性向上や残留応力の低減には、比較的低温で実施される残留応力緩和(SR)熱処理が有効で、この技術を適用。精密加工用に「SUS316L H―SR」を開発した。フォトエッチング加工などの精密加工に適した高耐食性材料として、ユーザーから高い評価を受け、採用が拡大中だ。

 板厚は0・08~0・60ミリ、製品幅は最大610ミリで17年に販売を開始した。

日本冶金工業/高ニッケル合金の冷延帯・板を拡販

 高ニッケル合金は火力発電所の排煙脱硫装置、化学プラント、熱交換器など極めて厳しい腐食環境下で使用され、溶接工数削減を目的として広幅コイル、広幅冷延板の顧客ニーズが高まっている。15年12月にNAS NW276の4フィート幅コイルの製造に初めて成功し、16年にNAS NW22、NAS625でも成功した。

 一方、製造難度が高いため生産性の著しく低い5フィート幅冷延板の製造プロセス改善も実施して生産性向上を達成、供給能力を拡大した。高ニッケル合金3品種の冷延帯・板受注は順調に拡大し、足元では15年度下期比2倍超となる月50トン超に拡大している。

 現中期経営計画でも当該高ニッケル合金を注力製品の柱に据えている。4幅コイル、5幅シートの海外拡販を進め、最終19年度に月100トンを超える販売を計画している。

日本金属/アルミ調鋼帯と高精度異型パイプ

 「アルミ調ステンレス帯鋼」は多様な表面仕上げの一つ。アルミ色の自動車用モールは欧米で人気があり、最近はグリルとモールの色合いを合わせるデザインも増えている。韓国車に続き日系車でもモールに採用された。ステンレスのBAモールと同じラインで生産できるためコスト競争力もあり、最終製品に要求される品質を素材で実現する「ニアネット・パフォーマンス商品」として顧客の評価を得ている。

 「高精度異型パイプ」は、外径20ミリに納まるサイズなら高難度の異型断面でも安定的に量産できる。板厚は0・15~1ミリが目安で最大長さは3メートル。目安公差はプラスマイナス0・02ミリ。昨春に専用設備を導入し、平面部が含まれる形状や厳しい寸法精度に対応できる加工技術を確立した。家電部品、モバイル部品、産業用角シャフトの開発を進めている。

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