市長インタビュー 子どもの貧困対策に力点 「生活に一層の安心・安全を」 相模原市南区

インタビューに答える加山市長

 2018年の年頭を飾る企画として、本紙では加山俊夫市長に対し、新春インタビューを行った。加山俊夫市長は相模原市の未来に対する構想や考え方、厳しい財政状況下での2018年度予算などについて率直に語った。

(聞き手/本紙さがみはら南区編集長・佐藤豪)

支援、交流の場を提供

 ――早速ですが、昨年(2017年)を振り返っての感想をお聞かせ下さい。

 昨年は相模原市内に練習拠点がある青山学院大学陸上競技部が箱根駅伝3連覇という、晴れやかな1年のスタートとなりました。

 市政におきましては、様々な取り組みを進めさせていただきました。4月には、「さがみはら新都心」の実現に向け、相模原駅周辺地区にある米軍基地の一部返還地において、将来の新市街地の主要道路となる「南北道路」が開通し、本格的なまちづくりの第一歩を踏み出しました。

 また、子どもや若者が将来に向けて夢や希望を持ち、自立・活躍ができるよう、「こども・若者未来局」を設置しました。さらに、この局には、妊娠期から子育て期まで一貫した支援を実施するため、各区に「子育て支援センター」を設置し、ライフステージに応じたしっかりした支援体制を整えました。子どもの貧困やいじめ、虐待が大変大きな問題になっていますので、こうした様々な課題を抱える子どもたちへの支援についても、教育委員会との連携を強化し取り組んできました。

 その他、横山公園の人工芝グラウンドの供用を開始しました。夜間照明も整備しており、サッカーやラグビー、グラウンドゴルフなど多目的に利用できる施設として、市民の皆さまにご好評をいただいています。

 6月には、2020年に開催される東京オリンピックの事前キャンプ地について、ブラジルオリンピック委員会や日本オリンピック委員会と、覚書の締結を行いました。これにより、女子サッカーや女子バレーボールなど、8競技が事前キャンプを行うことになります。キャンプに関しては、2015年頃からブラジル側から問い合わせをいただき、情報提供や視察の受け入れなどを行ってきました。来年度には「協定書」を結ぶ予定になっており、今後は、ブラジル代表選手に最高の環境でキャンプを行ってもらうため、さがみはらグリーンプールの飛び込み台をオリンピック仕様に改修するなど、キャンプの受け入れに向けた準備を進めてまいります。世界最高水準の選手が来ることで、市民をはじめスポーツ関係者にとって良い刺激になるのではと思います。オリンピックまで3年ありますので、スポーツをはじめ、市民の皆さまが交流できるよう検討させてもらっています。

 8月には、JAXAの研究施設がある7つの市や町で構成する「銀河連邦」が建国30周年を迎えたことを記念して、相模原市で「こどもワールドサミット」を開催しました。国内だけでなく、本市の友好都市のある中国やカナダ、宇宙開発でJAXAと協力関係にある施設のあるフランス領ギアナやウクライナの4カ国の子どもたちも参加して、「100年後の宇宙と地球」について語り合い、メッセージを発信してくれました。言葉や文化の壁を越え、子どもたちはすぐに仲良くなり、交流も進んだのではと思います。

 その他にも、共に支え合う地域社会の実現に向けた福祉や人権などの施策の推進や、防災力の向上、医療体制の充実、教育環境の整備、産業の集積、就労支援などの施策にも積極的に取り組んできました。

給付型奨学金制度を創設

 ――新年度予算編成の骨格、テーマ、重点施策をご説明下さい。

 「新・相模原市総合計画」の基本構想に掲げた都市像の実現に向け、「後期実施計画」の着実な推進に努めていきます。

 産業、経済、子育て、雇用、高齢者、防災、教育全てが重要な課題で、対策を講じていきますが、今年は特に、子どもの貧困対策に力を入れていきたいと思っています。学力と子どもの貧困は少なからず連鎖しています。厚生労働省の調査によると、現在、子どもの7人に1人が貧困状態にあり、社会全体でも子どもの貧困問題への対応は喫緊の課題となっています。そこで、相模原市では学習意欲があるにも関わらず、経済的な理由により、高校などへ進学が困難な生徒を対象に新たな「給付型奨学金制度」を創設しました。今年の4月に高校などに入学する生徒から利用できるよう準備を進めており、具体的には対象となる約300人に修学資金として年額10万円、入学支援金として2万円を給付する内容になります。所得など一定の基準はありますが、生徒の学力に関わらず給付が受けられるのが特長で、平成32年度には3学年で対象人数が約1000人、約1億円の事業規模となる見込みです。公立高校の教育費は授業料を除くと、年間24万円程かかるといわれており、この奨学金を給付することで、より多くの子どもたちの就学につながればと思っています。募集人数や給付内容などから、県内最大規模の手厚い支援内容になると考えています。

 この新たな給付型奨学金をはじめとする貧困対策や学力保障などの取り組みを安定的に進めるため、「相模原市子ども・若者未来基金」を併せて創設し、ふるさと納税や、土地や資産など市民の皆さまからの寄付の一部を積み立ててまいります。

 さらに、これまでの制度を拡充するものとして、小・中学校へ入学する際に支給する入学準備金を小学校では20470円から40600円へ、中学校では23550円から47400円へと約2倍に増額します。支給時期も入学後の8月から、入学前の3月下旬に変更いたします。その他にも、市内にあります放課後の無料学習塾や子ども食堂などを行うボランティア団体などとも意見交換を行っており、今後も連携をとりながら支援を進めたいと思っています。また、子どもの実態を把握するため、昨年に2500人の保護者と500人の子どもを対象にアンケート調査を行いました。この結果を元に、子育ての課題やニーズ、子どもの悩みなどを把握し、必要な対策を行っていきたいと思っています。

 新年度の予算編成に関しましては、税収入の増加が期待できない一方で、扶助費の増加や老朽化する公共施設の改修・更新への対応など、引き続き厳しい状況が続くと想定されており、これを踏まえ、徹底した歳出の削減や一層の歳入確保、効果的・効率的な事業の推進に取り組み、市民の皆さまの安全で安心した市民生活をしっかりと守っていけるよう、取り組んでまいります。

新交通システム導入へ

 ――新しい交通システムについてお聞かせ下さい。

 相模原市では、市内間の交通の充実が長年の課題となっており、高齢化の進行に伴い、公共交通の必要性がさらに高まっています。1989年度から導入の検討が開始されましたが、その間に周辺地域を取り巻く環境も変わってきました。そうした中、2016年11月に「新しい交通システム導入基本計画」を策定しました。

広域連携型の都市形成を

 新しい交通システムとして導入するBRT(幹線快速バスシステム)は、路線バスをベースとしたもので、専用レーンの整備や、連節バス車両による運行などにより、定時性・速達性の確保や輸送力の増大に大幅な改善が期待できます。

 導入区間は、小田急線の相模大野駅から北里大学病院や女子美術大学を経由し、JRの原当麻までとしています。現在、用地買収交渉など、地権者と話し合いを進めており、計画策定から概ね5年以内に交差点の改良や、バス専用停車スペースの整備などを行っていく予定です。

 バス専用レーンは、渋滞が著しい県道52号の相模原公園入口交差点から西大沼4丁目交差点を予定しており、西大沼4丁目交差点から国道16号方面は将来的に道路拡幅工事が行われる際に合わせて整備を行っていきます。整備は、自転車通行が多い、北里大学病院周辺から順次予定し、現在、交通管理者などとの協議や設計・測量を行っているところです。

 また、これからは、1自治体だけではなく、周辺の都市とも連携して、広域連携型の都市形成が必要となってきます。そのためにも、新交通システムは重要と考えています。

 ――最後に新年に向けて、本市読者へのメッセージを御願い致します。

 市民の皆さま一人ひとりが、将来に夢や希望を持つことができ、安全で安心して心豊かに暮らすことができる地域社会の実現に向け、全力で取り組んでいきます。

 市政への変わらぬご協力を賜りますようお願いするとともに、本年が皆様にとって、素晴らしい1年となることを心からお祈り致します。

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