「財政再建、道筋つける」 平井市長が新年の抱負 逗子市・葉山町

インタビューに応える平井市長

 本紙では新年の幕開けにあたり、平井竜一逗子市長に単独インタビューを行った。過去最悪ともいえる財政状況に直面した2017年を振り返るとともに4度目の悲願となる総合的病院誘致の現状と展望についても話を聞いた。

(聞き手=本紙編集長・佐藤弦也)

――まず昨年を振り返って。市の財源が7億円不足することが分かり、10月に財政対策プログラムが発表されました。市民サービスが縮小されることに未だ懸念の声も聞こえてきます。また12月には市議会で市長に対する不信任案(否決)も出されました。

 「大変重く受け止めています。市民の皆様にはご迷惑をおかけしていることをお詫びするとともに、厳しいご意見はしっかりと受け止めなければなりません。一方で、人口減少による市税の減収、高齢化に伴う社会保障費の増加など社会構造の変化で、従来の市民サービスを維持することは難しいのも現実です。今の実態にあった財政構造や市政運営に転換する岐路であり、市長として説明責任を果たしていく考えです」

――財政対策はご自身の給与を始め、人件費削減などいわば”節約”が柱です。新たな財源を生み出す青写真はありますか。

 「昨年から試行実施している葉山町の可燃ごみ委託処理が4月から全量受け入れになるため、前年度比プラスの歳入が見込めます。また逗子市からはし尿処理を葉山町に委託する予定で、合わせて年間2億円近いコストメリットが生まれると考えています」

総合的病院誘致「実現へ全力」

――例えば企業誘致を目指す考えは。

 「これまでも議論はありましたが、住宅都市である逗子での実現性は未知数です。一方、スモールビジネスでの創業は需要があり、最近では会社勤務でなく在宅や共有スペースで働く『テレワーク』といった仕組みも民間発で動き出しています。そうした取り組みを後押しすることは、長期的なまちの活性化に繋がると思います」

――移住促進は各自治体が力を入れています。子育て分野などのサービスが縮小されても逗子市は人口流入が得られるでしょうか。

 「小児医療費の助成や教育環境の充実など、これまで他の自治体に遅れをとらないよう進めてきました。保育料に関しては現状でも、横浜市より低い水準です。また、この10年ほどで国の制度が拡充しており、子育てや障害者の手当ては国が保障する時代に変わりつつあります。そうした背景も加味した上で、自治体独自に何を手厚くするのが適切か、議論していく必要があります」

――総合的病院の誘致について。昨年11月、配分された109床を葵会が県に申請しました。目指すのは300床規模です。展望は。

 「来年度から始まる県の次期保健医療計画で、横須賀三浦地域の不足病床については現時点では131という数字が示されています。そのままだとすると、開設時に300床には届きません。いずれにしても2019年3月末に決まる増床の追加配分が鍵になります」

――不確定要素が多く、実現の見通しが不透明にも思えます。

 「実現が不確実なことは元々承知で誘致を再開しています。計画前に明らかになった医療圏の不足病床数も175。そこで病院誘致を決断しなければ、機会は巡ってきませんでした。厳しい道のりではありますが、県は団塊の世代が後期高齢者になる2024年には現在よりも700床近く増床が必要との試算を示しています。先の情勢を見据えれば2020年度内開設の可能性は残されていますし、そこに向けて全力をあげていきます」

――病院誘致が実現したとして最短で3年後、財政対策の期間は6年間。一方で市長3期目の任期は残り1年です。

 「まさにこの1年が正念場と考えています。特に財政再建については早期に道筋をつけ、将来の展望を示すことは自らの責任だと痛感しています。残りの任期を全力で臨む所存です」

――最後に市民に向けてメッセージを。

 「厳しい状況ではありますが、気を引き締め、市民の声を受け止めながら現状を乗り切っていく覚悟です。皆様のご協力を何卒お願い申し上げます」

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