高校バレーボールの日本一を決める「全日本バレーボール高等学校選手権大会」、通称「春高バレー」。夏のインターハイと並び、高校生選手たちの憧れである同大会に、六合在住の井上拓真さん(県立荏田高3年・主将)が、神奈川県第一代表として出場する。開幕が目前に迫り「全国制覇をめざす」と、学生生活を締めくくる大舞台での飛躍を誓った。
バレーボールが好きな両親の影響で、横須賀市内の小学生チーム「あすなろ」に加入したのが年長の頃だった。「どうせやるならみんなとは違うことをやってみたい」。同年代の友人らが野球やサッカーなどを習い始めるなかバレーと出会い、この選択が今へ至る道を決定づけた。
同チームの発起人は、高校バレー界ではかつて無名だった県立釜利谷高校を日本一へ導き、その後、名門の順天堂大バレー部監督などを歴任した名将の蔦宗浩二氏。体力づくりやプレーの基礎、儀礼、何よりもチームスポーツの楽しさを教わったという。
岬陽小学校卒業後は、バレーボール部を求め、横須賀市の大矢部中学校へ学区外通学を選んだ。これまで以上に練習へ打ち込むと、次第に頭角を現すように。関東大会3位入賞やジュニアオリンピックカップの神奈川県代表チームへの選出などで実績を残してきた。
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高校は自身の素地を作ってくれた蔦宗氏の教え子で、荏田高校をインターハイ初出場でベスト16に導いた齋藤雅明監督が指揮官を務める同校へ進学。六合の自宅から学校のある横浜市都筑区まで、片道2時間超の道のり。早朝練習ともなれば午前5時過ぎには家を出なければならないが、「やりたいと言い出したからには、途中で辞める訳にはいかない」。「そして、自分より早く起きてお弁当を作ってくれた母には感謝したい」と照れくさそうに心のうちを語った。
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身長175cm、ポジションはセッター。平均182・5cmのチーム内では比較的小柄で、厳しい口調で叱咤することはほとんどないが、常にコートの陣形や仲間たちのプレーに目を配り、精神的支柱として存在感を放つ。
そして、さらに際立つのは、他を圧倒する忍耐力。「高さで劣るならば」とレシーブを強化し、守備力を重点的に向上させた。また、怪我に悩んだ時期は「やれることをやるだけ」とコンディション維持のために練習を継続。その意志の固さは「厳しい要求にもジッと我慢する強さがある」と齋藤監督も瞠目するほどだ。
昨年の春高バレー後、県内常勝校の伝統を引き継ぎ、主将に抜擢。背番号1を託された。「一言で言うなら個性派集団」と話すようにチームメイトは能力や性格など良くも悪くも皆、個が強い。「まとめようと無理におさえつけるのではなく、個々の良さを引き出し、生かしていこう」。ゲームメークを担うセッターとして培った鋭い観察眼と広い視野が冴える。
数ある球技のなかでもバレーボールは、球を落としたら負けの「繋ぐ」スポーツ。「コミュニケーションもバレーの楽しさのひとつ」
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5年連続5度目の出場となる春高バレーの開幕も、いよいよ目前。「いい流れができている。思い切り行きたい」と気合は十分だ。
県大会は、高さを生かした攻守で順当に勝利。決勝では夏のインターハイ予選で惜敗を喫した県立弥栄と第一代表の座を争い、2年ぶり2度目の県優勝を果たした自信がある。「全国制覇をめざす」。センターコートでの活躍を静かに誓った。
高校卒業後は、9人制バレーの実業団で今後も競技を続ける。「まずはスタメンを取ること。そして全国優勝したい」と目を輝かせる。
今年を漢字一文字で表すと――との問いかけには、「『挑』。学生最後の大会と卒業後の新たな世界。挑戦の1年になる」
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シードを獲得した荏田高校は、1月5日(金)に行われる第2回戦が初戦。相馬(福島県)と別府鶴見丘(大分)戦の勝者と激突する。