カネミ油症が副読本に 「ふるさと長崎県」 事件概要や支援策など記載

 1968年に本県など西日本一帯で発覚した食品公害カネミ油症事件が、初めて県教委発行の中学生用教材に登場する。副読本「ふるさと長崎県」に概要などを1ページ使って記載。1年生らを配布対象に、今月から県内全公立中へ発送している。

 県教委義務教育課によると、中学生の教科書では油症事件の詳細を載せた例はない。事件から半世紀近くたった今まで、副読本も含め記載が実現しなかった理由について「差別や偏見を生んだ歴史や、被害者の中に思い出したくない人がいることも配慮すると、掲載が難しい面があった」としている。

 きっかけは1年ほど前、消費者問題に関わる年表に油症事件を表記した教科書があったことから、検討に入った。県教委担当者が被害者に話を聞くと「若い世代に事件を伝えてほしい」と強く要望された。

 掲載は「公民的分野」の1ページ分。カネミ倉庫が製造した米ぬか油に、ポリ塩化ビフェニール(PCB)やダイオキシン類が混入し、食べた人たちに吹き出物や視力低下、倦怠(けんたい)感など多様な症状が出たことを説明。被害者の多い五島市の支援策や啓発活動も紹介している。

 義務教育課は「事件を風化させてはならず、副読本で中学生は学んでほしい」としている。

(2016年4月16日掲載)

カネミ油症事件を記載した副読本

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