厚労省研究班 混入物が防御機能を阻害

 厚生労働省の全国油症治療研究班(班長・古江増隆九州大大学院教授)は29日までに、1960年代に本県など西日本一帯で起きた食品公害・カネミ油症の発症の仕組みを解明したと明らかにした。油に混入したダイオキシン類が皮膚の防御機能を阻害し、吹き出物などの症状を引き起こしていた。

 細胞には体外から入ってきた物質に反応する「AhR」と呼ばれる受容体が存在し、皮膚細胞に特に多い。

 研究班は人間の皮膚細胞を用いた実験を重ね、通常の体内ではAhRが種々の物質と結合して遺伝子に働き掛け、皮膚の保護機能を高めたり、臓器の免疫力を調節したりしていることを突き止めた。

 カネミ油症患者は、体内に入ったダイオキシン類のポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)が、AhRと結び付いて活性酸素を大量につくり出し、細胞の老化が促される。その結果、吹き出物や黒ずみなどの皮膚疾患や内臓疾患を発症することが、これまでに分かっていた。

 研究班はこれらからAhRが通常の作用をしなくなったのが原因と結論付けた。

 研究班はPCDFをAhRと結合させない対処法も模索。漢方薬に結合を阻害する効果や抗酸化作用があることを見いだし、臨床研究を進めている。

 カネミ油症は、カネミ倉庫(北九州市)製の食用米ぬか油にPCDFなどが混入し、油を使った料理を食べた約1万4千人が全身の吹き出物や内臓疾患の症状を訴えた。厚労省によると、今年3月末現在で認定した患者数は約2200人。

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