大きく育て、アユ10万匹 6月解禁へ稚魚到着 厚木の種苗センター

 昨年秋にふ化し、県内水面種苗生産施設(相模原市南区下溝)で養殖されたアユの稚魚約10万匹(約80キロ)が5日、県内水面漁業協同組合連合会厚木あゆ種苗センター(厚木市三田)に運ばれた。6月1日のアユ漁解禁へ向けて同センターで育てられ、5月上旬から中旬に、相模川などに放流されて釣り人を楽しませる。

 同連合会では数年前から、相模湾で取ったアユから近い世代で、野性味を失っていないアユを養殖して相模川などに放流する取り組みを続けている。アユは秋に川で産卵し、ふ化した稚魚は数日で川の流れに乗って相模湾に下り、湾内でプランクトンを食べて育ち、春に再び川をさかのぼる。湾内で捕獲した稚魚を養殖して生ませた子がF1、F1の子がF2と呼ばれ、今回運ばれてきたアユはF2の子のF3に当たる。

 同連合会によると、以前は海で取ったアユから人工繁殖を30数世代繰り返した稚魚を放流していた。だが、人工繁殖が数十回も繰り返されたアユは、川の増水で下流に流されてしまうことが多い。これに対しF2、F3といった自然に近い世代のアユは増水しても流れの緩い岸辺などで耐え、流されずに残る確率が高いという。

 この日は、県内水面漁業振興会の職員3人と県水産課職員らが3センチ余りに育った稚魚を丁寧にバケツですくって、専用のトラック荷台の水槽に次々と入れた。約30分かけて厚木あゆ種苗センターに運ばれた稚魚は、水槽からつないだパイプの中を水と一緒に流れて種苗センターの直径約10メートルの水槽へ。広い水槽に放たれた稚魚たちは、水流に逆らいながら元気よく泳ぎ回り始めた。

 山口芳郎同連合会会長は「今年は稚魚が順調に育っている。相模川は首都圏の釣り人が数多く訪れるので、アユ解禁へ向けて稚魚をしっかりと育てていきたい」と話していた。

 アユの稚魚は、県内水面種苗生産施設でも養殖して放流される。

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