「世界のHAYAMA」発信へ 五輪やSNS活用視野に 逗子市・葉山町

インタビューに応じる山梨町長

 新年の幕開けにあたり、本紙は山梨崇仁葉山町長に単独インタビューを行った。英国代表の五輪事前合宿があった昨年を振り返ってもらったほか、町の課題の展望についても語ってもらった。

(聞き手=本紙編集長・佐藤弦也)

――まず昨年を振り返って。どんな1年でしたか。

 「町が従来抱えていた課題の”穴埋め”に一区切りがついて、新たな命題への一歩が踏み出せた1年だったように思います。例えば逗子市との共同ごみ処理や公共施設の再整備などです。また対外的には五輪に向けての情報発信ができた年でもありました」

――夏にはセーリング英国代表による事前合宿が町内でありました。手応えはありましたか。

 「行政としては事前交渉と協定を取り交わすまでで、そこから先のおもてなしは町民の皆様によるところが大きかった。語学ボランティアの方々の協力など、葉山の国際力の素地もさることながら、そのきめ細やかな対応も非常に評価されたと聞いています。英国チームは今年6月にも再訪が決まっていますし、国も町民協働のおもてなしをモデルにしたいと、葉山の取り組みを例として発信しています。『日本ヨット発祥の地』を一層広める契機にもなったはずです」

――町の魅力を海外発信することにも繋がるのではないでしょうか。

 「これからは国内だけでなく、海外にも目を向けて魅力を発信できればと思っています。情報化社会のなかでインスタグラムなどのSNSも活用しつつ、『世界のHAYAMA』。これを広めていきたいと考えています」

給食施設、センター方式で推進

――学校給食センターの建設計画が進められています。

 「建設予定場所を旧上山口小学校から葉山中学校の敷地に変更し、現在6校分約2800食の給食が提供できるかの調査を進めています。小学校の調理施設は30〜40年前に設置されていて、老朽化に加え衛生管理で調理員が苦労しています。アレルギー対策を含め安心安全な給食を提供するため、なるべく早く整備に着手したいと考えています」

――議会からは自校方式を求める声も根強くあります。

 「もちろん比較検討は行いましたが、様々な事情を考慮しての判断です。現在の衛生基準に照らし合わせて改装すると莫大な費用がかかるだけでなく、工事期間中、長期に渡って給食の提供も止まってしまいます。また調理施設が分散していることで、どうしても人件費が継続的に膨らんでしまう。その上で中学校2校を増やすことは、将来的な負の遺産と言わざるを得ません。センター化を進めることで、これらの課題に的確に向き合うことができます」

――建設費について。五輪開催に伴う建設費や人件費の高騰もあります。

 「他自治体でも同様の計画が進められており、町として一定の費用基準は持っています。建設の五輪特需については、我々が着工するときにどのような状況なのか、今一度冷静に考えるべきでしょう。また建設費の問題は、仮に開設を先送りにした場合、働きに出られている保護者が増えている中、どのような影響があるか。それらを総合的に加味した上で最終的に判断するつもりです」

――昨年は他の自治体で異物混入など不祥事もあり、食の安全が求められます。

 「民間業者への委託ではなく、公設公営で調理現場や働く調理師を『見える化』できる施設を想定しています。その意味でもセンター方式の方がより安全性は高まるでしょう。しかもいま検討しているテーマは『手作り』。米飯給食も積極的に取り入れようと現場の議論も活発に行っています」

――新たな取り組みについて。里山の再生を通じて、町の魅力を発信する構想があると聞きました。

 「町民を中心として町職員も事務局として参加している委員会が検討を進めており、里山ツアーや農業体験、地場野菜を使った料理教室などを構想しています。土地を無償で借りる契約を進めており、契約できれば年度内にも具体的な取り組みができると考えています。目指すは海だけではない、新たな葉山の『山』の魅力創出です」

――最後に町民に向けてメッセージを。

 「五輪開催に伴って今後英国だけでなく、様々な国の方々が葉山を訪れる機会があるでしょう。『世界の中での葉山』を実感できる場面も増えると思います。また、もうひとつは里山の活用を通じて、町民が葉山で休日を楽しめる機会を新たに作ります。皆様にはぜひそんな前進している葉山を少しでも実感していただけたらと思います」

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