5人の女性が、伊藤という1人の男に振り回される。ここ1年の間に『PとJK』『彼女の人生は間違いじゃない』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』が公開され、さらには4月に『ママレード・ボーイ』も控える売れっ子監督・廣木隆一が、柚木麻子の同名小説を映画化した異色の恋愛映画だ。
伊藤は、超イケメンだけど無神経で自意識過剰な28歳のフリーター。もう一人の主人公が、伊藤が通うシナリオ教室の講師で落ち目の女性脚本家。彼女は、自分のファンの4人の女性の恋愛相談をネタに再起をかけた脚本を書いているが、4人の恋の相手がそろって伊藤だった…。
設定は奇抜でキャッチーだが、エピソードやキャラクターには説得力があってリアル。お手本のような脚本なのだが、当然だろう。主人公が脚本家の上、内容自体も面白い脚本を書くには何が必要か?という“ドラマ論”であり“脚本論”なのだから。
もちろん、女優を撮る名手・廣木監督にとっても格好の題材で、キャスト陣の魅力を生かしつつ決して脚本の邪魔をしない演出を貫きながら、それでもしっかりと作家性をにじませる腕前はさすがである。
ただし、4人のエピソードを2人ずつ前半と後半に分けた構成に関しては、もっと攻めて4つを最後まで並走させる手はなかったか? 分かりやすく組み立てるには現状がベストなのかもしれないが、破綻なく小ぢんまりまとまってしまった気もする。★★★★☆(外山真也)
監督:廣木隆一
原作:柚木麻子
出演: 岡田将生、木村文乃
1月12日(金)から全国公開