【オリジナル6連載】第3回目:仕事と選手を両立する桑田寛之選手

 日テレG+で放送された日本初開催の国際大会、テレビ朝日の報道ステーション、Golaco[ゴラッソ]にコラムを寄稿している元なでしこの丸山桂里奈さんが出演した、テレビ愛知のフットゴルフ特番等。フットゴルフがメディアに取り上げられる機会が増えています。

 そんな注目のフットゴルフについて「サッカー」×「ゴルフ」の融合スポーツという全体像や競技の部分だけではなく、フットゴルフ界で活躍しているトップ選手達から知ってもらうというコンセプトのもと、Golaco[ゴラッソ]では取材記事を連載中です。

 フットゴルフ界には初代日本代表に選ばれた6名の選手がいて「オリジナル6」と呼ばれています。彼らはトップ選手として現役で活躍。新規の選手が増えてきた現在でも一目置かれる立場に君臨しています。

 連載第1回目の新井晋選手、第2回目の田中雄太選手に続き、第3回目の今回は、報道ステーションのフットゴルフ特集に出演した桑田寛之選手をご紹介します。

 ※前回、第3回目は冨沢和末選手と記載していましたが、順番が変更になりました。

(オリジナル6の選手達 左から新井晋選手、鈴木秀成選手、桑田寛之選手、田中雄太選手、冨沢和未選手、コージャ今村選手)

報道ステーションに出演!アジアチャンピオン桑田寛之選手とは

 オリジナル6で現役の日本代表でもある桑田寛之選手は、アジアカップで優勝したアジアチャンピオン。そして、2017年はアメリカで開催されたメジャー大会(U.S. PRO-AM 2017)で日本初の9位入賞も果たしました。桑田選手はフットゴルフ選手であるのと同時に、富士通株式会社に勤める会社員でもあり、仕事をしながら日々の練習に取り組んでいます。

 桑田選手は、同時期からフットゴルフをしている選手達から「ヘロ」というあだ名で呼ばれています。独特なあだ名なので気になって由来を聞いてみたところ、海外の大会に初めて出場した際、大会エントリー名が「Heroyuki Kuwata」と誤って登録されていたことがきっかけで「ヘロ」というあだ名が誕生したのだとか。

 あだ名の由来についてもニコニコと丁寧に教えてくれた桑田選手は、物腰や言葉遣いが柔らかく、全体的にマイルドな雰囲気を漂わせています。しかし、ひとたび勝負の場面になると雰囲気は一変。徹底した姿勢で臨む本格的かつ正統派の競技志向の選手です。また、栃木県にあるTBC太陽クラブ(栃木県小山市神鳥谷2247-3)のアンバサダーを務め、フットゴルフの様々な普及活動に積極的に参加しています。

 これまで筆者がみてきた限りでは、パワフルなロングキックを飛ばすわけでも、派手なパフォーマンスをみせるわけでもありませんが、「冷静沈着」で「的確」にボールをコントロールし、カップに近付けていく印象です。淡々としながらも着実にカップインするスタイルは、他の選手達にはプレッシャーを与えやすいかもしれません。

 ティーキック、アプローチキック、パットの中で、桑田選手が一際輝き特徴が現れるのはパットの時です。重心を低くして構える独特なパッティングフォーム、そして、ゴルフでもよくみられる、ボールを仮想的に手で転がしてカップまでの距離感のイメージを取り入れる等。フットゴルフ選手はサッカー経験者らしい素振りを見せる選手が多い中で、桑田選手の場合はゴルファーらしさも多く見えます。

会社員生活とフットゴルフの両立

 桑田選手はフットゴルフ選手であり、会社員であり、一児のパパでもあります。様々な役割を持ち多忙を極める桑田選手の一日のスケジュールを教えてもらいました。

【桑田選手のとある平日の1日】

6:00⇒起床

6:30-8:00⇒河川敷でフットゴルフの朝練習(週1~2回)

8:00-8:20⇒子どもを保育園へ送る

8:40-12:00⇒自宅でのテレワーク(メールチェック、資料作成)

13:00-15:00⇒担当顧客との打合せ

15:00-17:30⇒事務所にて資料作成、社内打合せ

18:00 ⇒子どもを保育園へ迎えに行く

18:30-19:30⇒夕食

19:30-21:00⇒ 家族団らん

21:30⇒子どもを寝かす

22:30-23:00⇒自宅でパット練習(週3回)

 現在のところプロとしてフットゴルフのみで生計を立てている選手は、オリジナル6の新井選手だけです。桑田選手を始め、日本代表の肩書を持つほぼ全ての選手は会社勤め、もしくは学生です。生活を維持しながらも、フットゴルフの練習を継続するのは時に困難なこともあるとは思いますが、情熱と選手特有のメンタルが困難を乗り越えさせるのかもしれません。

桑田寛之選手インタビュー

 ―桑田選手がフットゴルフを始めたきっかけを教えてください。

 「私は子どもの頃からずっとサッカーをやっていて、学生時代は体育会サッカー部で、社会人になっても住友商事のサッカー部に入り東京都リーグに出場しておりました。しかしある時、試合中に肩を脱臼してしまって。脱臼が癖となってしまい、サッカーをやる機会も少なくなりました。そんな時にフットゴルフというスポーツを知って、接触プレイもないことから興味を持ちました」

 ―桑田選手はゴルフ経験者ですか。

 「はい。社会人5年目くらいからゴルフを始めました。ゴルフも好きなスポーツです。フットゴルフはゴルフの要素があるスポーツということもあり、楽しく感じました」

 ―フットゴルフのルールの多くはゴルフのルールと似ていると思いますが、今後サッカー経験はあるけどゴルフ未経験という方が興味を持って始めることもあるかもしれません。桑田選手が考える、ゴルフ未経験の場合の、フットゴルフの難しさは何ですか。

 「フットゴルフはゴルフ場でプレイするので、平たんな場所でキックするサッカーとは違い傾斜や木や池、バンカーなどの障害物もあります。また、ボールを止めてくれる相手もいないので、ボールをどこにどの位の強さで蹴れば最終的にどこに止まるのかを考える必要がある点で難しいのではないかと考えています。ただこの難しい点こそフットゴルフの魅力だと考えています」

 ―フットゴルフに必要なゴルフの考え方とはどういうものですか。

 「ゴルフ未経験でサッカー経験だけある方の場合は、常にストレートにカップを狙い続けて蹴る傾向があります。フットゴルフは、最終的にいかに少ない打数でカップにボールをいれるかが勝負です。その為ゴルフ同様コースマネジメントが非常に重要だと思います。例えば、カップの奥が急な下り坂になっており外すと大きくカップから遠ざかる可能性がある状況で、カップは直接狙わないが確実に2打でカップインする方法、もしくは、リスクはあるが勝負時と考え1打でカップインをすることを選択するのか等、沢山の選択肢からその瞬間、瞬間でベストな選択をしていくことがゴルフの考え方なのかと考えています」

 ―論理的な考え方が必要なのですね。

 「先ほどの例とも似ていますが、例えばボールを10割の力で蹴ったら、他の選手より2m飛ぶかもしれないけど、30%程失敗する確率も出てくるとします。しかし、もし8割の力で蹴ったら、他の選手より2m飛ばないかもしれませんが、失敗する確率は10%くらいになるとします。フットゴルフは、そうなったらどちらを選ぶかという選択の連続なのです。失敗するリスクは高いが他の選手より2m飛ばしてバーディーを取りにいくのか、もしくは、ボギーは絶対に叩いてはいけないホールなので、他の選手より2m飛ばないが可能性の高いプレイに徹し、パーを着実にとりにいくのか。そういう考え方が必要になります」

 ―他の選手から、桑田選手はとてもメンタルが安定している選手だと聞きました。桑田選手がメンタルを安定させるためにしている考え方や、取り入れているもの等はありますか

 「メンタルが強いかどうか自分ではわかりませんが、私はプレイッシャーがかかる程、自分の中でアドレナリンが出ていい結果がでる傾向が強く、その結果メンタルが安定していると思われているのかもしれません。常に自分の選択した方法を信じて、いいイメージをもってプレイすることが心がけています」

 ―メンタルスポーツといわれているフットゴルフ向きのタイプなのかもしれませんね。

 「フットゴルフは最終的にいかに少ない打数であがるかの勝負なので、1打1打の積み重ねがとても大切になります。いくらビッグプレイをしたからといって、次のホールでミスをしてしまうと、せっかくのプレイも帳消しになってしまいます。ミスをすることは勿論ありますが多くの場合でそのミスを引きずらず、リセットして目の前の1打に全力をかけることができている点で、向いているのかもしれません」

オリジナル6への想い

 ―オリジナル6の中で一番仲の良いメンバーは誰ですか。

 「全員と仲が良いです。皆と隔たりなく刺激し合い、良き仲間、良きライバルです」

 ―オリジナル6の中でライバルとして特に意識してしまう選手はいますか。

 「2015、2016年と日本チャンピオンでもあります富沢和末選手です。やっぱり彼は強いので意識していますね。冨沢選手の存在が自分ももっと頑張ろうというモチベーションにも繋がっています」

 ―フットゴルフ界においてオリジナル6とはどういう存在だと感じていますか。

 「ありがたいことに現在は、日本でも沢山のフットゴルファーが世界の大会含め出場するようになりましたが、このオリジナル6の6人が初めて日本代表として海外の大会に出場させていただき、海外選手との歴然とした差を肌で感じ全員ボロボロの結果でとても悔しい思いで日本に帰ってきました。そこで感じたフットゴルフの奥深さや世界のトップ選手のレベルの高さを日本に初めて伝えたのがこの6人ではないかと思っています。今でも初めて海外大会に参加した際の衝撃は6人とも忘れられない出来事だと思います」

 ―フットゴルフは仲の良さが目立つスポーツで、正直とても魅力的だと感じています。フットゴルフ界の仲の良さの理由は何だと思いますか。

 「フットゴルフは基本個人戦なので、試合中は不安との闘いがあり、試合後に共通して理解し合える話題があるからかもしれません。あとは成長中のスポーツなので、皆で一緒に盛り上げていくという共通意識があるからかもしれません」

インフォメーション

桑田寛之選手

昭和58年11月8日生まれ。兵庫県出身

サッカー歴28年、ゴルフ歴6年

【2017年出場大会 結果】

JFGA Tour

27th JapanOpen 2 nd

28th JapanOpen 5 th

29th JapanOpen 1 st

30th JapanOpen 6 th

31st JapanOpen 4 th

32nd JapanOpen 4 th

2017 JapanOpen final 2 nd

International

U.S. PRO-AM 2017 9 th

JAPAN INTERNATIONAL OPEN 2017 17 th

CAPITAL CUP(HOLLAND) 36 th

TAIWAN OPEN 1st  2 nd

TAIWAN OPEN 2nd  3 rd

TAIWAN OPEN 3rd  1 st

Beijing FOOTGOLF OPEN 1 st

World Ranking 38 th (アジア1st)

TBC太陽クラブ

http://www.tbctaiyoclub.com/index.html

桑田選手、鈴木秀成選手がアンバサダーを務めているゴルフ場です。随時フットゴルフをプレイすることができます。フットゴルフのプレイを希望する場合はTBC太陽クラブまで直接お問い合わせください。

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