脱北失敗で1日に20人逮捕…北朝鮮当局が警戒強化

最近、中朝国境地帯で脱北を試み逮捕される人が増加しており、元日だけで20人以上が逮捕されている。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、両江道と西隣の慈江道(チャガンド)の国境地帯で、脱北を試みた2家族など20数人が逮捕された。彼らは、国境警備隊の警備が元日に緩くなるのを狙って、午前3時ごろに川を渡ろうとしたが、途中で発覚して逮捕された。

国家保衛省(秘密警察)は、国境地帯で脱北を試みる者が増えると予想し、要員に対して住民の動向を監視するよう指示を下していたという。

国家保衛省、人民保安省(警察庁)、人民班(町内会)は住民に対し、「どこそこの川原は脱北しようとしていた人が大勢捕まったところで警備を強化している。水汲みや洗濯も中止せよ」といった形で、暗に「脱北するな」と警告している。

情報筋によれば、これは陽動作戦も兼ねている。

実際に警備を強化しているのは別の場所で、そこで大勢が一網打尽にされる事例が発生したという。また、恵山(へサン)市では「行商に行く」と言い残して家を出て、他人の家に数十日間身を隠し、脱北の機会をうかがっていた家族が、川岸で逮捕される事件も起きている。

家宅捜索も強化されている。数日に渡り人気(ひとけ)のない家があれば、保安員(警察官)が人民班長(町内会長)立ち会いのもとで鍵を壊して中に入り家宅捜索を行う。家財道具がそのままになっていれば、単に行商に行ったものと判断してそれ以上の捜索は行わないが、少しでも怪しいと感じれば家中をひっくり返し、捜査範囲を広げて逮捕してしまう。

情報筋によると、昨年1月初旬に逮捕された人は30〜40人だったが、今年は元日の1日だけで逮捕者が20数人となった。さらに中国から強制送還されてくる人まで含めると、取調室と留置場が足りなくなり、保衛部も保安署も新年から忙しそうにしているとのことだ。

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