2017年はソロ30周年として、全曲新曲のアルバムや記念LIVEなど盛んに活動した工藤静香。彼女のヒット曲を男性声優たちがカバーしたのが本作だ(前述のLIVEの映像ソフトも同時発売)。
全7曲、男女逆転カバーゆえ原曲をさほど意識せずに聴ける。そうすると、やはり浮き彫りになるのが声のイケメンぶりで、どれも人気アニメの劇中歌のようだ。また、後藤次利や中島みゆきなどが手掛けた楽曲が、時を経ても色あせないことにも気づかされる。
その中で、熱唱している3曲と、王子様キャラ全開の4曲に大別されるように感じた。前者は、『抱いてくれたらいいのに』『めちゃくちゃに泣いてしまいたい』『Blue Velvet』で、どれも工藤静香ファンじゃないかと思うほど力強い歌声が印象的。他方、後者は、80年代~90年代のキラキラ感に溶け込むような歌声で、こちらも原曲や本人へのリスペクトを感じた。
いずれにせよアニメに疎くても楽しめる逸品。本作を聴くと、実力を備えていれば、本気でぶつかっても、場に溶け込むよう臨んでも、良い形になることを学ぶはず。
(ポニーキャニオン・2315円+税)=臼井孝