出題ミス

 この時期に書くべき話かどうか首をひねりながら…と前置きしたところで「無神経」のそしりは免れまいが、受験の合否はこれから先に何度も訪れる岐路の一つでしかなく、途中経過でしかない▲人間万事塞翁(さいおう)が…と古びた教えを持ち出すまでもあるまい。受験の時には「滑り止め」だった学校に、生涯の師や友や大切な人との出会いが待っていることもあるだろう。1年後のリベンジを誓って失意から立ち上がった瞬間、彼や彼女はそれまでの自分より確実に強くなっている▲ただ、分かれ道の矢印が誰かの過ちであらぬ方向にねじ曲がっていたとしたら話はまるで別だ。昨年の入試問題に誤りがあった、不利益を受けた30人は追加合格させる-と大阪大学▲1年近くたってひょっこり咲いた季節外れのサクラは、喜びばかりでなく戸惑いも広げているに違いない。実は合格でした、どうぞ阪大へ、って今更言われても…そんな受験者もゼロではなかろう。せめていま少し対応が早ければ▲大学側の平謝りは当然だ。影響は、思わぬ場所まで及んでいる可能性がある。「補償」に際して何より大切なのは豊かな想像力かもしれない▲世の入試担当者にとっては得難い「他山の石」だ。周到な準備で受験生のチャレンジを迎えてほしい。週末は大学入試センター試験。(智)

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