【非鉄リサイクル2団体会長インタビュー 今後の展望と課題】

 今年の非鉄金属市場は、中国の生産削減政策にともなうLME(ロンドン金属取引所)価格の上昇、自動車業界の好調を受けた需要の伸びなどを受けて、総じて明るいムードで終えた1年と言えるだろう。国内のリサイクル業界も夏以降、その流れを映して荷動きが改善し、活気を取り戻した。一方、今後に向けた課題もある。廃鉛バッテリーなど有害廃棄物の不適正な輸出入を規制するため、廃棄物処理法、バーゼル法改正案が5、6月に成立した。国内流通にも影響を与えるとして、非鉄金属業界内外で大きな注目を集めている。さらにこれまで大半が輸出に振り分けられていた雑品スクラップは、中国の輸入制限を受けて国内での選別処理が避けられない情勢となっている。廃棄物の適正処理を使命とするリサイクラーの役割はさらに重要性を増している。省エネ・省資源、エネルギー循環型社会の構築を目指すため、業界の活性化や問題解決に向けて積極的な取り組みを行っている非鉄金属2大品種である銅、アルミのリサイクル2団体トップに、今後の展望を聞いた。(佐藤 創太)

非鉄金属リサイクル全国連合会・小林秀之会長

荷動き改善も一部で余剰感/各地の問題共有化資源循環の重責担う

――昨年、小林会長が理事長を兼務している東京非鉄金属商工協同組合(以下、東京非鉄)が設立60周年となった。そして、今年は上部組織に当たる全国連合会(以下、全連)が同じく60周年を迎える。まずはこれまでの事業活動の総括を。

 「おかげさまで東京非鉄は60周年の節目を迎えることができ、昨年5月に都内で記念祝賀会を開催した。関係者の方々には大変感謝している。60年という歴史は、業界団体としては決して古い方ではない。地方支部の神奈川ではすでに70周年を迎えている。各地区の立ち上げやその取りまとめに時間がかかった」

――印象深い出来事は。

 「60年の歴史において、印象に残っていることが三つある。36年前、リサイクル原料である非鉄金属スクラップの輸出自由化が認可されたこと。第二に、2015年に日本銅センター賞を受賞したこと。第三に、昨年の経産省の金属課統合だ。金属業界もグローバルになり、動脈産業との関わり合いと静脈産業である我々の立ち位置を改めて見定め、後進に道をつなげていかなければならない」

 「まず、スクラップの輸出自由化について述べたい。それまで日本はスクラップの輸入国の立場だったが、輸出国へ転換した第一歩となった。国内リサイクル業者にとって大きなインパクトを与え、需給バランスの安定化に寄与したと言えるだろう。かつては行き場をなくした真中粉が隅田川に投げ捨てられるなどの問題もあったと聞く。輸出自由化によって需要家メーカーが購入制限を敷いて市中の荷余り感が強まっても、輸出向けに出すことができるようになった」

 「日本銅センター賞を受賞したことも思い出深い。高品位な原料の供給で日本製伸銅品の普及に貢献したという評価をいただいたが、今後もその思いでまい進したい」

――昨年を振り返ると、原料の荷動きはどうだったか。

 「年初は前年末からのトランプ相場の恩恵を受けて、銅やアルミなど軒並み強基調で推移したが、品物が発生し過ぎたあまり、『二重価格問題』も浮上した。市中の銅リサイクル原料価格は建値の上昇幅とズレが生じ、思ったように伸びなかった。先行き不透明感から多くの問屋が仕入れ値の引き上げに慎重姿勢を取り、価格のばらつきが混乱を生む要因となった。この問題が収束するのに春まで時間を要した」

 「夏場以降に再び価格が上昇し、電気銅建値が80万円台を突破したことで商いはだいぶ改善された。一方、1号銅線などの上物類に関しては銅箔メーカー需要がけん引役となり堅調に推移したが、真中粉系統の需給は非常にだぶついた印象だ。特に関西ではメーカーの買い控えの動きが顕著で、相当荷余り感があったようだ。この問題は現在も続いており、引き続きメーカーの動向に注視していきたい」

――今後の活動の展望は。また、就任当初から掲げている若手の育成について。

 「各地区の問題点の共有化も引き続き進めたい。それぞれの地域によって抱えている問題は異なる点もあるが、共通する話題も多いはずだ。各地区だけ、あるいは役員だけで話を進めるのではなく、各会員から幅広く要望や意見をすくい上げ、全体で協力していくことが肝要だ。その意味でも、青年部会の育成がますます大事になってくる。若い世代が情報交換を行い、これまでになかった新しい風を吹き込んでくれることも期待している」

――昨年、新たに設立した「リサイクル環境推進部会」について。

 「経産省金属課の統合により、鉄鋼、非鉄などの垣根を越えた会合が行われるようになった。これまで以上に横のつながりの強化を図っていきたい。メーカー、流通、マスコミ、諸官庁など非鉄金属業界全体での連携、交流を重視している」

 「リサイクル環境推進部会を立ち上げたのもその対策の一環。現在、省庁で進められているバーゼル法改正に関する問題では、会員企業である東港金属の福田隆氏に当組合の代表者として窓口に立ってもらっている。業界内でのプレゼンス向上は今後の課題となる。雑品スクラップの中国の輸入規制、バーゼル法の改正などの諸問題を解決して、国内のリサイクルをどのように循環していくか。我々に課せられた使命は重い」

軽金属同友会・川部久雄会長

需要環境の変化を商機に/環境負荷抑え、選別精度向上へ

――アルミリサイクル業界について、昨年を振り返って。どのような1年だったか。

 「価格面では、悪くなかった1年と言えるだろう。LMEアルミ市況は9月下旬に現物2200ドル際まで上昇し、2012年9月以来5年ぶりの高値を付けた。合金、軽圧メーカーなどの原料需要も1年を通じて比較的堅調に推移した。

 「日本アルミニウム合金協会の月次生産統計を見ても、特段の落ち込みもなく一定していたと思う。缶材(UBC=使用済みアルミ缶)については8、9月に輸出量が落ち込んだが、国内で余剰感が出るまでには至らなかったという印象。メーカーも潤沢に在庫を保持しているようだ。また、為替の円安水準もここ2年では高く、国内価格のサポート要因となっていた」

 「当会としては昨年、皆様に支えられて創立50周年を迎えることができた。4月に帝国ホテルでの記念式典を開催し、無事に終えられたことも印象深い。故・岡村晋吾氏(岡村金属前社長、同会会長も務めた)らこれまで業界の発展に尽力されてきた重鎮の訃報といった悲しい出来事もあったが、彼らがいたからこそ、ここまで当会が金属業界で認知され、立派に節目の年を迎えることができたと思っている」

――原料問屋の取扱量は減少傾向にある。また、今年はリサイクルに関連し、廃棄物処理法やバーゼル法改正案が成立した。中国では品位の低い雑品スクラップの輸入を規制する動きが強まり、今年の終わりにも規制が本格的に強化される見通し。これらの影響をどうみるか。

 「スクラップの需給環境が大きく変わろうとしている。我々のアルミリサイクルがどのような影響を受けるかは不透明だが、悲観するばかりではなく、そこに商機を見いだす姿勢が大切だ。東京オリンピック開催を控えて、ビス付サッシなど解体物件由来のスクラップ発生も増えるだろう。構造がいかに変化しても、柔軟に対応して流れを見極める力が求められる」

 「我々は、不純物が少なく歩留まりの良い原料をメーカーに供給することが最大の責務。環境負荷を抑え、選別加工の精度を高めていくことで、海外や異業種の新規参入プレーヤーと差別化を図っていく」

――精度向上の一環として、昨年は同友会として初めての試みである分析器の研修会も開催した。

 「ハンドヘルドタイプの金属成分分析器についての研修会を10月に都内で開催した。分析器メーカー4社から担当者を招き、機器の説明や実機テストなどを実施していただいた。会員、関係者ら40人が参加したが、それぞれの製品の特徴や判別時の注意点などについて知見が深まり、好評だったようだ。分析器を持っていない問屋も少なくないが、研修会を役立ててもらえてよかったと思う」

――今後の同友会としての課題は。

 「定期的に支部会を開催し、各部会ごとに情報共有や親睦交流を行っているが、この回数も今後は増やしていきたい。会員数増加に向けた取り組みも今後の発展に不可欠だろう。そうした取り組みは地道に継続していかないと次の世代につながらない」

――リサイクル業者に今後求められるものは。

 「精度、選別能力の向上はもちろんのこと、個々の従業員のレベルの引き上げも重要になっていく。すべてのスクラップを事前に一つ一つ分析器で調べて選別するわけにはいかないので、目視で確認して見極めなければならないが、その技術を身に付けるためには通常何年もかかる」

――一昨年は、アルミ二次合金向け原料にリチウムが混入する事例も地方で発生した。

 「当会でホームページでも情報を逐次アップし、注意喚起を行っている。従来の品種だけならいいが、近年ではアルミと特殊な素材を配合した新しい金属原料も登場している。それらの選別精度を上げるため、社員教育にいっそう力を入れることも求められる」

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