金属行人(1月10日付)

 渋滞と言えばやはり高速道路の車だろうか。いやいや車に限った話ではない。世の中に存在する人や物などのあらゆる流れは、どうしても滞ることと無縁ではない。どうすればスムーズに動くのか。数学を応用した「渋滞学」で知られる東京大学の西成活裕教授は、渋滞解消のカギは「急がば回れ」だと話す▼例えば、高速道路の場合、1台1台の車が急ごうとして車間距離を詰めていくほどに車の流れは悪くなる。一方、あえて車間距離を広げ、ゆっくりと走れば車の流れはスムーズになる。結果的に後者の状況の方が目的地に早く到着できるそうだ▼工場の生産計画もやはり重要なのは余裕という。稼働率を最大限に引き上げたくなりがちだが、パンパンの生産計画に臨時の特急品は入らない。ひとたび故障が起きれば遅れを取り返すのも難しい▼最適化を狙うべきではない、と西成氏。キーワードは「準最適」という。環境が変わるたびに短期的な最適解を求めるよりも、長期の視点でいつでもほどほどの結果をぶれずに出せる方がトータルコストで最適だと説く▼回り道でも本道を行けば、結局、目的地に早く着く。気持ちを新たにする新年。おのおのの目標により早く到達する回り道を見つけたい。

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