銀行取引停止のジャパンライフ、「事業は継続する。倒産していない」

 昨年12月26日、銀行取引停止処分を受けたジャパンライフ(株)(TSR企業コード:291624898、代表取締役:山口隆祥氏)が新年早々、各地で動きだしている。
 取引停止処分以降に顧客や代理店を集めて開かれた説明会で、同社幹部が「ジャパンライフは事業を継続する。倒産していない」と事業再開の意欲を示し、「新たに販売会社を設立し、3年間で280億円の返済」を「目標」にすると説明した。
 消費者庁が求めた公認会計士の監査では、2017年3月期の負債総額は2,405億円だった。

 東京商工リサーチ(TSR)情報部は、昨年12月22日付の山口会長の「お詫び」を入手した。そこには「消費者庁の的外れの業務停止命令と(中略)報道で、予定の入金が一気に無くなり、ついに資金繰りが出来ずに、この様な事態に陥った」と説明。「これからの人生全てをかけて必ずご返済申し上げます」と書かれている。

資金繰りがつかず不渡りへ

 また、手元にTSRが独自入手した昨年12月15日付のジャパンライフが関係者へ送付した「解約返金を希望されるお客様へ」がある。そこには「業務には全く支障をきたしておりません」と記載されていた。
 だが、「解約に関しては、当社が責任を持って対応致しますが、直近でのご返金が難しく、準備期間としまして解約申請をされてから約3カ月間のお時間をいただけましたら幸いです」として、「立て直し期間に約3カ月間が掛かる見通し」とも記している。
 業務には全く支障をきたしていないが、すぐに返金に応じる資金はない、というわけだ。
 その前の12月12日には本社不動産を売却し、同15日には山口ひろみ氏が社長を辞任した。そして、同20日に愛知県の弁護団がジャパンライフの告発状を同県警に提出した。取り巻く事態が激変するさなかでの文書送付だ。

今年に入り関係者向け説明会を活発化

 昨年末、荷物が運び出されるジャパンライフ本社前で、「12月29日午前(代表が)成田から香港へ脱出」との怪文書が撒かれた。
   別の紙には「逃亡を許すな!一般社員は怒ってるぞ」とも書かれている。本社周辺は社員だけでなく、顧客や債権者、報道陣が集まり混乱した状況の中での配布だった。

ジャパンライフ荷物運び

荷物を運び出すジャパンライフ関係者(12月22日撮影)

 この騒ぎをよそにジャパンライフは新年早々から、顧客や代理店など関係者向けの説明会を開催している。ある出席者は「ジャパンライフ幹部が出席し、顧客も多数参加していた」と説明会の様子を語った。
 説明会では、ジャパンライフ幹部が「必ず返金するが、調査中のためいつ返済できるかなどは言えない。不渡りは社会保険料で、担当が仕事を放棄したことで発生した。正直びっくりした」などと他人事のように語った。今後については、「販売会社のKEN-SHINを新たに設立する。ジャパンライフはメーカーとなり商品をKEN-SHINに納入、KEN-SHINがエンドユーザーに販売する」と再建案を示した。
 また、「磁気治療器を大幅に値下げする」とも発言。小売価格200万円と高額だった磁気ベストを40万円に値下げし、ジャパンライフの経費を大幅に削減して返済原資とする」と計画案を声高に説明した。
 配布された事業計画及び返済契約には、「2018年の売上高は約80億円、返済目標は約40億円。2019年の売上高は約180億円、返済目標は約100億円。2020年の売上高は約240億円、返済目標は約140億円」と記載されている。
 質疑応答で顧客のひとりが「弁護士に相談している。返金はいつできるか」と迫ると、同社関係者が「破産した場合、配当は0.01%ぐらい。ほとんど戻ってこないだろう」と切り返し、その迫力に会場はシーンと静まった。
 説明会の最後、顧客からまばらな拍手が起こった。会社案に賛同する顧客もいるようだ。

ジャパンライフ資料

セミナーで配布された資料(参加者提供)

相次ぐ差押

 1月9日、ジャパンライフが所有する不動産の登記簿の一部を確認した。
 中国地区の不動産は、昨年12月26日に東京国税局が差押を登記している。関東地区の不動産は自治体が12月27日に差押、同月28日に参加差押を設定。また、別の抵当権も12月22日付で設定されている。別の物件には1月9日、神奈川県が差押を登記している。この他、ジャパンライフ所有とみられる不動産の複数が登記書換え中で閲覧できなかった。
 税金関係を中心に差押が加速し、金融機関は共同担保の物件を追加している。ジャパンライフは債権者のこうした一連の動きをどう顧客に説明するのだろうか。

ジャパンライフ本社

ジャパンライフ本社(1月撮影)


 ジャパンライフは、説明会で「事業の継続、新会社設立による再建策」を公表した。だが、計画通りに3年間の返済目標280億円を確保しても、2017年7月時点の特定商品の預託等取引等の契約残高1,714億円には遠く及ばない。
 今、ジャパンライフ被害対策中部弁護団だけでなく、全国各地に消費生活センターや弁護士会などが相談窓口を開設している。
 ジャパンライフが示す返済目標の280億円は何が根拠なのか。顧客と契約した預託等取引の商品はどこにあるのか。再建の実現性はどうか。会社側から詳細な説明はない。この間、TSR情報部はジャパンライフへ何度も取材を申し込もうとしたが連絡がつかなかった。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年1月11日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

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