金属行人(1月11日付)

 「問題はすべて現場で起きている」―東海地区の特殊鋼メーカーの賀詞交換会。同社のトップが、集まった多数の参加者を前に分かりやすく語る。その「問題」というのは、大半が「小さな誤り」だという。それを放置すれば誤りの穴が広がり、ある時点を境に体制が大きく崩れていく。対応は後手に回る。いかに日ごろから現場をつぶさに見て現実に目を向け、耳を傾け、会話することができるか。小さな「課題の種」を摘み取れるか▼考えてみれば人の病気や日々の社会生活も同様だろう。自分の身体も人間関係も、ある意味「現場」そのもの。日々のメンテナンス、客観的で冷静に状況を見極め、早めに手当てすることがいかに大事か▼記者が取材する現場も例外ではない。インターネット依存の情報収集(データジャーナリズムと言われる場合も)は、現場からの報告とは言いにくい。そうした一次情報を現場の実態と照らし合わせてどう考えるか。これが重要なのだろう。自戒であるが▼今年は「需要堅調」がちまたの合言葉。その中で、一体具体的に事態はどう動いていくのか。それを、いささか鈍り始めた五感を動員して「現場」から伝える。例年にも増してそんな年になりそうだな、と勝手に思い込んでいる。

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