【投手の球数を考える】シーズン3000球が限界のNPB、3000球が“基本”のMLB

楽天・岸孝之【写真:荒川祐史】

投手の酷使が問題になる野球界、日米の投球数の違いは…

 最近、野球界では「球数」が大きな注目を集めている。昭和の時代のプロ野球では「球数」はほとんど話題にならなかったが、投手の酷使が問題になる中、投球数は投手の消耗度を測る重要なバロメーターとなっている。

 2017年度のセ・パ両リーグの投球数10傑を見ていこう。登板数と1先発登板あたりの球数も紹介する。

【パ・リーグ】

1岸孝之(楽)3004球(26登板 115.5球)
2金子千尋(オ)2964球(27登板 109.8球)
3則本昂大(楽)2916球(25登板 116.6球)
4菊池雄星(西)2892球(26登板 111.2球)
5涌井秀章(ロ)2739球(25登板 109.6球)
6バンデンハーク(ソ)2598球(25登板 103.9球)
7美馬学(楽)2596球(26登板 99.8球)
8有原航平(日)2543球(25登板 101.7球)
9東浜巨(ソ)2520球(24登板 105球)
10山岡泰輔(オ)2409球(24登板 100.4球)

 3000球を超えているのは楽天の岸孝之だけ。2位にオリックス金子、3位に楽天則本。則本は奪三振王。三振を奪うためには球数が嵩む。1先発登板あたりの球数は10傑の中で最多の116.6球だ。

 今季、最多勝、防御率1位の西武菊池は4位。則本に比べると1試合あたりの投球数は5球少ない。

【セ・リーグ】

1マイコラス(巨)2954球(27登板 109.4球)
2菅野智之(巨)2795球(25登板 111.8球)
3田口麗斗(巨)2729球(26登板 105.0球)
4ブキャナン(ヤ)2569球(25登板 102.8球)
5野村祐輔(広)2560球(25登板 102.4球)
6メッセンジャー(神)2503球(22登板 113.8球)
7大野雄大(中)2503球(24登板 104.3球)
8バルデス(中)2489球(23登板 108.2球)
9今永昇太(De)2471球(24登板 103球)
10大瀬良大地(広)2466球(24登板 102.8球)

 セ・リーグには3000球以上投げた投手はいない。巨人マイコラスが最多。マイコラスは投球回数も最多で、奪三振王だった。続いて巨人菅野。1先発登板あたりの球数はマイコラスより多い。阪神、メッセンジャーはその菅野を上回っている。大野は中継ぎ2登板が含まれている。

 NPBでは毎年、3000球を超える球数を投げる選手は数人しかいない。しかし、MLBでは「シーズン3000球」は、先発投手の基本的な前提になっている。

MLBで昨季3000球以上を投げたのは33人

 昨年、MLBで3000球以上投げた投手はこんなにいる。

【アメリカン・リーグ】

1ジャスティン・バーランダー(2球団)3531球(33登板 107球)
2クリス・セール(レッドソックス)3428球(32登板 107.1球)
3クリス・アーチャー(レイズ)3406球(34登板 100.2球)
4リック・ポーセロ(レッドソックス)3383球(33登板 102.5球)
5ケビン・ガウスマン(オリオールズ)3357球(34登板 98.7球)
6マルコ・エストラーダ(ブルージェイズ)3246球(33登板 98.4球)
7アービン・サンタナ(ツインズ)3235球(33登板 98球)
8トレバー・バウアー(インディアンス)3148球(31登板 101.5球)
9マーカス・ストローマン(ブルージェイズ)3143球(33登板 95.2球)
10マーティン・ぺレス(レンジャース)3097球(32登板 96.8球)
11リッキー・ノラスコ(エンゼルス)3091球(33登板 93.7球)
12ルイス・セベリーノ(ヤンキース)3082球(31登板 99.4球)
13ドリュー・ポメランツ(レッドソックス)3080球(32登板 96.3球)
14カルロス・カラスコ(インディアンス)3058球(32登板 95.6球)
15ウェード・マイリー(オリオールズ)3054球(32登板 95.4球)
16ジェイソン・ハメル(ロイヤルズ)3029球(32登板 94.7球)

 アメリカン・リーグでは、タイガースとアストロズで投げたバーランダーが3531球を投げている。以下、16人が3000球以上。ちなみに田中将大は2810球で21位だった。

【ナショナル・リーグ】

1ジオ・ゴンザレス(ナショナルズ)3364球(32登板 105.1球)
2ゲリット・コール(パイレーツ)3298球(33登板 99.9球)
3ジェフ・サマージャ(ジャイアンツ)3273球(32登板 102.3球)
4タナー・ロアーク(ナショナルズ)3216球(30登板 107.2球)
5ジェイコブ・デグロム(メッツ)3168球(31登板 102.2球)
6ザック・グリンキー(ダイヤモンドバックス)3163球(32登板 98.8球)
7ランス・リン(カージナルス)3151球(33登板 95.5球)
8カルロス・マルティネス(カージナルス)3132球(32登板 97.9球)
9ジョン・レスター(カブス)3131球(32登板 97.8球)
10マックス・シャーザー(ナショナルズ)3111球(31登板 100.4球)
11ザック・デービス(ブルワーズ)3089球(33登板 93.6球)
12ダン・ストレイリー(マーリンズ)3085球(33登板 93.5球)
13パトリック・コービン(ダイヤモンドバックス)3084球(32登板 96.4球)
14フリオ・テヘラン(ブレーブス)3074球(32登板 96.1球)
15クレイトン・リチャード(パドレス)3045球(32登板 95.2球)

 ナ・リーグでも3000球以上投げた投手は15人いる。MLB全体では、シーズン中にリーグを移動して3000球以上を投げたホセ・キンターナ(3176球、ホワイトソックス/カブス)、ダルビッシュ有(3054球、レンジャース/ドジャース)がいるので、33人になる。

 MLBの球団数は30、1球団に1人は3000球投手がいることになる。MLBの先発投手は、NPBよりも多くの球数を投げている。

 しかし、1先発登板あたりの球数が100球を超える投手はア・リーグ、ナ・リーグともに5人だけ。ほとんどの投手が100球以上投げるNPBとは大きく異なっている。

 143試合制のNPBの先発投手は中5~6日でシーズン25試合前後登板し、110球前後で降板している。162試合制のMLBでは、中4~5日でシーズン32試合前後登板し、100球以下で降板している。

 MLBとNPBでは、先発投手の環境は大きく異なることがわかる。

(細野能功 / Yoshinori Hosono)

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