イノシシの食害防げ 大磯町、農家ら手探り

 大磯町が2015年度から鳥獣害対策の専門家の話を基に知識を深め、営農者らとともにイノシシの食害から田畑を守る取り組みを進めている。17年度は町北西部の虫窪、黒岩、西久保地区を対象に座学などをこれまで計4回開催。最終回の13日は、県が小型無人機「ドローン」で撮影した画像を使って対策の進展を確かめるとともに、田畑に寄せ付けず餌をなくさせる「兵糧攻め」の重要性などを話し合った。

 近畿中国四国農業研究センターに勤めていた井上雅央さん(68)を講師に招いての町の試みは、本年度で3シーズン目。12日現在でイノシシ93頭を捕獲・処分し、田畑を電気柵で囲むなど取り組みが進むが、食害は後を絶たず、今後も根気強い対策が求められている。

 13日は町民ら約40人が虫窪老人憩の家に集まり、昨年11月に県がドローンで空撮した町北西部の画像を手掛かりに話し合った。

 その画像から、田畑の鳥獣害対策の進展具合や、獣道の痕跡、イノシシとみられる足跡を確認。また同地区の課題である、収穫や手入れがされずに放置され、イノシシが餌にしている栗や柿の木の対応について知恵を絞った。

 参加者は「手つかずだった栗の木を5本切った」「農業者以外をいかに巻き込んだらいいか」などと意見交換。虫窪地区でミカン農家を営む二宮晃一さん(64)は「地域で電気柵はだいぶ普及してきて、今季はイノシシの被害をゼロに抑えられた。この動きを周囲に広げていきたい」と呼び掛けた。

 世話が行き届いていない田畑周囲の防風樹を高さ1メートルまで刈り込むことでイノシシが隠れられなくなり、寄り付かなくなることも学習。井上さんによると、鳥獣害を抑えるには、動物の駆除以上に、この地域から餌をなくす「兵糧攻め」が有効という。井上さんは「無理をしても続かない。地域で何ができるか考え、できることから第一歩を踏み出して」とアドバイスした。

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