歌会始の“衝撃”

 議会取材で再三耳にする敬語の誤用が一つある。「先ほど○○が申されたように」…○○に「知事」や「市長」「町長」「議員」と入れれば、どこの議事録でも必ずいくつか見つかるはず▲では解説。動詞「申す」+尊敬の助動詞「れる」。きちんと敬語になっていそうだが「申す」は「言う」をへりくだっていう「謙譲語」だから他者の行為に使うのは間違い。ご関係の皆さん、今後はご注意を▲と、柄にもない話題を思いついたのはもちろん「歌会始の儀」で入選した佐世保市立清水中1年、中島由優樹さんの一首〈文法の尊敬丁寧謙譲語僕にはみんな同じに見える〉。シンプルな意見表明が新鮮で衝撃的で、ちょっと笑える▲「行く」の尊敬語は「いらっしゃる」で謙譲語は「参る」、「する」は「なさる」と「いたす」…肝心の敬意はそっちのけ、一覧表の丸暗記に忙しかったあの頃を思い出した人も多そう▲さて入選作。言葉は生き物で、大切なのは豊かなコミュニケーションだから小難しい理屈で僕らを国語嫌いにしないでという“国語教育への挑戦状”だろうか。はたまた、奥深い日本語の世界の入り口に立った新たな決意を詠んだか▲などと、ありがた迷惑な注釈はこれぐらいで…。熱心な学校と聞く。生徒の皆さん、これからも伸びやかな31音を。(智)

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