千載一遇のチャンス? ソフトバンクの1軍捕手枠に最も近い存在は…

ソフトバンク・栗原陵矢【写真:福谷佑介】

春江工高から2014年のドラフト2位で入団した栗原陵矢

 例年以上に、目をギラつかせている。「こんなチャンスはなかなかないですからね」。新たなシーズンとなる2018年。2年連続日本一のかかるソフトバンクにあって、1人の若手選手に千載一遇とも言える好機が巡ってきている。 

 栗原陵矢、21歳。福井県立春江工業高校(現在は福井県立坂井高校に統合)の出身で、2年時のセンバツで春夏通じて学校初の甲子園に出場。3年時は甲子園出場は叶わなかったが、現西武の高橋光成や巨人の岡本和真らと共に18Uアジア選手権の日本代表に選ばれ、主将も務めた。2014年のドラフト2位でソフトバンクから指名され、2018年が4年目となるキャッチャーだ。 

 ソフトバンクの捕手といえば、2017年にブレイクを果たした甲斐拓也の名前が挙がるだろう。育成選手として入団し、昨季1軍の主力へと定着した25歳。昨季はこの甲斐と高谷が主に先発マスクを被り、第3捕手にはベテランの鶴岡慎也が控えていた。栗原は、高谷が骨折で離脱した際に初の1軍昇格、そして1軍デビューを果たしたが、高谷の復帰とともにファームへと戻ることになった。 

 ところが、このオフ、チームの捕手事情は一変した。2010年のドラフト1位だった山下斐紹が、西田哲朗とのトレードで楽天へ移籍。2013年オフにFAで加入し、4年間在籍した鶴岡は2度目のFA権を行使して、古巣の日本ハムに復帰した。先輩捕手が一気に2人もチームを去った。チーム内で支配下登録の捕手は6人に。昨季ウエスタン・リーグで主にマスクを被ったのは、山下、栗原、そしてまだ高卒ルーキーの九鬼隆平だった。ポッカリと空いた1軍枠に、最も近い存在となったと言えるだろう。

12月には東浜らとともにハワイで自主トレ「充実した時間だった」

 1月9日。帰省していた地元の福井から福岡・筑後市内の若鷹寮に帰寮した栗原は、休むことなく室内練習場に姿を見せた。午前中には甲斐や千賀滉大、2018年のルーキーらが練習をしていたが、栗原が動き出した時には無人となっていた。誰もいなくなった練習場で1人黙々と体を動かした。「例年とは違って(1軍を)意識はしますね。今年は何がなんでも掴みにいくつもりです」。そう語る口調は力強い。 

 昨年12月、栗原は東浜巨に“弟子入り”し、ハワイでの自主トレを行った。共に参加した加治屋蓮、松本裕樹、そして現地では五十嵐亮太とも合流し、トレーニングに汗を流した日々は、「充実した時間でした。体幹の弱さとかを感じましたし、自分の体を使えていない。力の伝え方が下手くそだと分かりました」と収穫を掴む、貴重な時間になったようだ。 

 栗原にとって、勝負の1年となるであろう2018年。「1つ1つのプレーの確実性を高めないといけない。安心して任せてもらえるような結果も残さないといけないと思っています」と言い、2016年まではファームで鎬を削り合った甲斐に対しても「負けたくないという気持ちはあります」。チャンスを掴めるか、掴めないか、は己次第だ。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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