【富山×岐阜】高岡の錫ぐい呑み作り体験記 風情ある町並みを楽しむ大人の女子旅③

美しい町をのんびり散策しながら地元グルメもじっくり味わいたい……と思ったら、富山県と岐阜県の風情ある町を渡り歩いてみませんか? 距離が近く昔からつながりも深い両県。大人の女子旅や夫婦旅行にぴったりの、古い町並みと祭り文化が息づく美しい土地を巡る旅「富山×岐阜」。第3話目は「高岡で鋳物体験編」をお届けします。

こんにちは。チイキイロ編集部のモノづくり憧れ系女子 ツキミです。

富山県と岐阜県をまたいで風情ある町並みと地元グルメを楽しむ旅シリーズ。3話目は、最後に訪れた富山県「高岡」編です。古い町並みが残る金屋町で初挑戦した、鋳物作り体験をレポートします。

※シリーズ記事はこちら↓
⇒【富山×岐阜】風情ある町並みを楽しむ大人の女子旅① 越中富山と飛騨古川
⇒【富山×岐阜】風情ある町並みを楽しむ大人の女子旅② 飛騨高山と城端
⇒【富山×岐阜】風情ある町並みを楽しむ大人の女子旅④ 4つの華麗なお祭り

鋳物の町 富山県:高岡

鋳物作りを体験したのは高岡市。高岡といえば、経済産業大臣から伝統的工芸品として指定されている「高岡銅器」が有名な鋳物(いもの)の町です。

鋳物とは……鉄・青銅・錫 (すず) ・鉛・アンチモン・アルミニウムなどの金属を溶かし、鋳型に流し込んで器物をつくる工法。また、その器物。

出典: https://dictionary.goo.ne.jp

鳳凰が出迎えてくれます。

今回訪れたのは、高岡の中でも“高岡鋳物発祥の地”と言われる「金屋町(かなやまち)」。

金屋町の町並み

金屋町も飛騨高山と同じく国の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されています。千本格子と呼ばれる縦に細く目が入った格子の家が町中にいくつも並んでいて、古い町並みの散策を楽しむことができます。

道は風情ある石畳。なんと銅が埋め込まれているそう。その道を辿りながら鋳物体験させていただく工房へ。

2日間で富山と岐阜を巡り、飛騨の匠の技や壮麗な曳山、美しい絹織物などたくさんの工芸品を見てきたので、鋳物作り体験にやる気マンマン!

ぶきっちょなわたしの伝統工芸体験レポートは、広島県の熊野筆に続く2回目。さて、どんなものができるでしょうか……

(熊野筆作り体験レポート:実体験して納得!熊野筆メイクブラシの質と価格)

鋳物の「ぐい呑み作り」に挑戦!

鋳物工房「利三郎」入口

今回お世話になったのは、金屋町で明治初期から鋳物に携わり、現在も工房とお店を構える鋳物工房「利三郎」さん。

■鋳物工房 利三郎
http://www13.plala.or.jp/jinpachi/

鋳物体験の前に、少しだけ工房を見学させていただきます。

うゎーっ!っと思わず声が出た、ザ・工房という光景。錫などの金属の粉が床に積もり、全体的に色はグレーでどっしりとした印象です。

ベテラン職人である四代目・利三郎さんが錫の風鈴にコツコツと、とても正確に穴をあけていらっしゃいました。

工房見学でイメージを膨らませて、早速、制作体験です。

五代目・利三郎さんに体験をサポートしていただきながら、今回作るのは「錫のぐい呑み」。

女性は普段なかなか金属を扱うことはないですよね。そんなんで大丈夫?! と少し心配しましたけれど、きちんと配慮してくださっていました。

素人のわたしたちに、職人さんと全く同じ作り方は難しいため、体験用に準備していただいたものを使います。とはいえ本気の製品にするとなると、「これは難しいな」というポイントがたくさん。

これはぐい呑みの鋳型。
ぐい呑みの表面に模様をつけるため、型の内側面に、鉛筆で自由に絵柄を描いていきます。

体験だから気軽に描けましたが、どんなモチーフにするか、模様を入れる場所はどこにするかのバランスなど、なかなか難しくてセンスが必要。

わたしは星のきらめきのような模様を散らしていきます。バランスは……笑
一緒に体験したみなさんは、文字を入れたり見てきた曳山のイメージを絵にしたり、個性豊か。文字を入れる場合は、透明フィルムに一度書き、裏から見たものを写し反転させておきます。

どんな柄にしたらいいか迷った時のために、参考にできるような本もいくつか置いてありました。絵なんて描けない!という方もどうぞご安心ください。

絵柄部分をペン型の硬い金属で削っていきます。削ることで、型に流し込まれた錫がその凹みにも流れ込み、模様となって浮き上がるんですね。

削り具合の深さ、太さによって模様の仕上がりが変わるので、難しいポイントです。不安に感じたら、職人さんに遠慮せず聞いてみましょう。やさしく教えてくれますよ。

型の模様づくりはここまで。

型の内側に液体を塗って表面を整え、火を入れて乾燥させます。右側にある凸型は蓋。
錫を流し込んだときに蓋が浮かないよう、重りをのせます。

いよいよ錫の登場です。錫のかたまり、初めて見ました!

当たり前ですけれど、最初は固形でカッチカチ。それを溶かします。鉄の柄杓にのせてバーナーで一気に加熱。すると、あっという間に液体になりました。(古い映画ですけどターミネーターの最後のシーンで、ターミネーターが溶けていく感じ。分かりますかね?)

錫にはほんの少しだけ不純物が混じっていて膜が張るので、その膜を丁寧に取り除いていきます。

錫の準備が整ったら、小さな穴から型に流し込みます。鉄の柄杓が結構重い! うまく入れられるかドキドキです。

無事に流し込みができました。このまま少し時間をおきます。固まるまでに結構時間がかかるのかと思ったら、他の方が錫を溶かして流し込んで……としている数分の間に固まっていました。あっという間です。

固まった頃を見計らって職人さんが型を割っていくと……

ぐい呑みが姿を現しました! 感動です。なんとなくいい感じに出来ている?かも? と期待しつつ、最後の仕上げは職人さんにお任せして、体験は終了です。

作品は後日配送していただくことに。
※当日お時間がある場合は、出来上がりを待って当日の持ち帰りも可能です。

職人さんの作品もしっかり見ておきたい!と思ったら、工房と隣り合わせのお店で見ることが可能です。お気に入りが見つかったら、もちろん買って家に連れて帰れますよ。

ぐい呑みの出来上がりを楽しみに、体験のあとにもう1つ、高岡銅器を扱うお店を訪ねました。1860年創業の「大寺幸八郎商店」さん。

創業当時から鋳物工場をつくり、高岡銅器に携わってきたそうです。自宅を開放したギャラリーには、鋳物だけでなく漆器や陶器など職人さんによる品物がたくさん展示されています。歴史を刻んだ建物には美しい細工が。

お店前にある体操ポーズの銅像と一緒に、同じポーズで記念撮影される方も多いそうですよ。

■大寺幸八郎商店
http://www.ootera.com/

1泊2日で
【富山:越中八尾】
【岐阜:飛騨古川】
【岐阜:飛騨高山】
【富山:城端】
【富山:高岡】
2県5箇所の歴史と風情ある町を巡ってきました。名残惜しいですが、富山駅に戻ってお土産を更に買い込み、東京に帰ります。

おっと! 富山駅では、富山ならではの「おむすび」を忘れずに買ってから電車に乗り込んでくださいね。ますの寿司で有名な源さんの「おむすび屋」で売られている「白えびおむすび」や、富山では大定番のとろろ昆布をのせた「とろろおむすび」がおすすめです。

錫ぐい呑み完成!

帰宅して1週間ほどで、完成した錫のぐい呑みが送られてきました。さて……

どうでしょう?! 口が当たる部分を職人さんが磨いてくださっていました。下の柄の部分のザラっとした表面から、飲み口の滑らかな部分への自然なグラデーションなど、さすが職人さん!

友人に見せると「こんなにかわいいのが作れるの?!」とビックリしていました。職人さんのおかげです。味がある(?)作品、作者本人としても大満足!(写真は一番よく見える角度を探しました 笑) 後日、一緒に作った仲間にも聞いてみたら、やっぱり大満足だったそうです。

以前、1本の日本酒をワイングラスやコップ、陶器のおちょこなどで飲み比べしたことがあるのですが、錫のコップで飲んだ日本酒のまろやかさが抜群に好みだったんです。実際、錫は雑味を取ると言われていますよね。

2018年のお正月から使おうかなと考えているのですが、これで日本酒を飲むのが楽しみで仕方がありません!

■錫ぐい呑み作り体験させていただいたのはこちら↓
 鋳物工房 利三郎  http://www13.plala.or.jp/jinpachi/
-----
さて、富山と岐阜、古い町並みが残る風情ある町と地元グルメめぐり、いかがでしたでしょうか? 

歩いているだけで不思議と落ち着く町というのは共通していますが、それぞれの町に、それぞれの歴史や大切にしているものがありました。今度はもっとゆっくり町に滞在して、実際のお祭りを見物したり、いろんなグルメを堪能したりで訪れてみたいなと思います。

実は近い富山と岐阜。懐深いしっとり大人の町。みなさんもよろしければぜひ味わいに行ってみてくださいね。

※富山と岐阜で出会った4つのお祭りの魅力は、「お祭り編」として別記事にてお届けします。お楽しみに。

「お祭り編」はこちら
⇒【富山×岐阜】風情ある町並みを楽しむ大人の女子旅④ 4つの華麗なお祭り
「富山×岐阜の旅」はこちら
⇒【富山×岐阜】風情ある町並みを楽しむ大人の女子旅① 越中富山と飛騨古川
⇒【富山×岐阜】風情ある町並みを楽しむ大人の女子旅② 飛騨高山と城端

© チイキイロ