金属行人(1月15日付)

 炭素生産性という指標がある。温室効果ガス排出量当たりのGDPを指す指標で、最近よく使われるのが地球温暖化対策に関わる文脈の中でだ。いわく「国際比較の中で日本は立ち遅れている。だから、もっと排出削減に力を入れなければならない」▼日本の炭素生産性は新興国よりも依然優位にあるが、先進国との比較では劣後している。こうした比較でよく引き合いに出されるのがノルウェーだ。日本の2倍以上の生産性を誇るという▼日本鉄鋼連盟が昨年、鉄鋼業の視点から見た分析を試みた。日本は粗鋼生産でノルウェーの約167倍。確かにエネルギー投入量は桁違いに大きい。一方でノルウェーの1人当たり鋼材消費量は日本の1・5倍に上る▼必要な鉄を輸入で賄うノルウェーは生産が少ない分、炭素生産性は高くなる。あくまで鉄という断面での分析だが、生産量の多寡が生産性の違いとなって表れているのだ▼日本の炭素生産性が伸び悩んでいる要因はさまざまだ。エネルギー消費の抑制がまだ不十分なこともあるだろうが、長引くデフレの中で経済成長率が低迷していることも大きい▼国際比較は重要だが、複数の要因から派生する指標の数字だけを取り出すのではなく、詳細な分析が必要だ。

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