快走

 日曜日のお昼、ひょっこり合わせたチャンネル。へえ女子駅伝か、おっ長崎が映ってる、と観戦を始め、そのままゴールまでテレビの前にくぎ付け…日本のあちこちにそんな「長崎人」がいたはず、と想像するとそれだけで楽しい。都道府県対抗女子駅伝、本県が堂々の3位▲トップから28秒差の好位置でたすきを受け、前の7人を並ぶ間もなく次々に交わした廣中璃梨佳選手の快走は圧巻だった。次の森智香子選手はペース配分の難しい独り旅で逆にリードを広げた▲その後も粘り強い走りが続く。絶対に抜かせんけんねっ、と声が聞こえそうなラストスパート。順位を落としてもずるずると簡単に下がりはしない▲アンカーの野上恵子選手は、競技界ではいつの間にか“少数派”になりつつある昭和生まれ。だが、ひと回り年下のトップランナーを相手に一歩も引かず、1秒差のトラック勝負で観衆をわかせた▲「たすきの重み」と言えば、駅伝の記事ではおなじみ、本欄でしばしばやり玉に挙げてきた“常套句(じょうとうく)”の典型例である。でも、チームで走ることで生まれる見えない力があり、走る人だけが知る重みがきっとあるのだろう、としみじみ▲次の日曜は男子の出番、月末の26日からは郡市対抗県下一周駅伝。たすきの勢いと熱い冬、どこまでも続くといい。(智)

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