民法改正案 除斥見直し「希望の光」 カネミ油症原告ら期待

 「ようやく希望の光が見えてきた」-。政府が31日に閣議決定した民法改正案は、賠償請求権が加害行為から20年で自動的に消滅する「除斥期間」の見直しを盛り込んだ。カネミ油症の新認定患者50人(うち本県26人、死亡者含む)がダイオキシン汚染の油を製造販売したカネミ倉庫(北九州市)などに損害賠償を求めた訴訟では、一、二審とも最大の壁が除斥の考え方だった。上告中の原告らは最高裁判決を前に、法改正が追い風になることを切望している。

 現行の民法は、法律に反した行為に対する賠償請求権がなくなるのは損害や加害者を知ってから3年か、行為から20年が経過した時と規定。3年は「時効」と明記され、被害者にやむを得ない事情がある場合は延長されることも。一方、20年は最高裁判例を根拠に、損害を認識していなくても経過すれば権利が消滅する除斥期間と考えられている。このため、戦後補償や公害など国や大企業を訴えた裁判では、除斥期間を理由に原告の請求が棄却されてきた。

 改正案は20年についても「時効」と明記。これにより除斥期間の考え方は取れなくなり、加害者側に不正行為があった場合などは、20年経過後も請求が認められる可能性がある。

 カネミ油症訴訟の一、二審で裁判所は、油症発生翌年の1969年末から起算し、2008年の提訴時には20年が経過しているため「訴える権利が消滅した」と判断している。

 「改正案の効力が訴訟に及べば、除斥期間は争点ではなくなる」と原告側弁護団の古坂良文弁護士。一審ではカネミ倉庫の責任も認められているため、損害内容を焦点に審理が進む可能性もあるとみる。

 原告団長の岩村定子さん(65)=五島市奈留町=は「被害者の立場からすると、こうなるのが当たり前」と強調。「これまで理由も分からず、法律論だけで裁かれてきたが、やっとそこから抜け出せる」と期待を寄せた。

(2015年4月1日)

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