カネミ油症新認定訴訟 原告敗訴確定 解説 加害企業免罪 政治解決を

 裁判所は、実質的に被害者を見捨て、加害企業を免罪した。

 油症認定によって自分や家族の健康を奪ったのがカネミ倉庫だとやっと明確になったとき、既に損害賠償請求権は消滅していたとする不条理な判断。民法の除斥規定を機械的に適用した。今後油症認定される人や被害が指摘される2世、3世に対する法的救済の道も断ちかねず、影響は極めて大きい。

 油症は、猛毒ダイオキシンの経口摂取で多数の死傷者を出した戦後最悪の食中毒事件だ。国は誤った診断基準を長年運用、多くが認定却下され切り捨てられてきた。その後、ダイオキシンが主因と分かり、発覚から36年もたった2004年に基準変更されたことで新たに認定されたのが今回の大半の原告たちだ。

 認定まで長年自己負担した多額の医療費、かさんだ出費、心身の苦しみをカネミ倉庫は償おうとしない。だから原告は08年、提訴に踏み切った。政府が今年3月に閣議決定した民法改正案では除斥の見直しが盛り込まれ、期待の声も聞かれたが、最高裁は無視した。この理不尽な現実を放置していいはずがない。政治解決の道は見いだせないか。

(2015年6月4日掲載)

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