カネミ油症新認定訴訟 原告敗訴確定 最高裁上告棄却

 1968年に本県など西日本一帯で発覚したカネミ油症事件の新認定患者50人(うち本県26人、死亡者含む)と遺族が、ダイオキシン類などに汚染された食用油を製造、販売したカネミ倉庫(北九州市)などに総額2億7500万円を求めた集団訴訟で、最高裁第3小法廷(木内道祥裁判長)は3日までに原告の上告を退ける決定をした。決定は2日付。原告敗訴が確定した。

 一審の福岡地裁小倉支部は、カネミ倉庫の責任は認めたものの、損害賠償請求権が不法行為から20年で消滅すると定めた民法の「除斥期間」を適用。油症発生翌年の69年末から起算し、原告の大半が油症認定される前の89年末に「訴える権利」が消滅しているとして、訴えを退けた。二審の福岡高裁もこの判決を支持していた。

 原告側は、除斥期間を適用しないよう求め、仮に適用するとしても「起算点は認定時」と訴えていた。

 油症患者が過去に起こした一連の集団訴訟終結後、新たに認定された患者が2008年に起こした訴訟。原告は診断基準が見直された04年以降に認定された人が大半で、認定されるまでは何の補償も受けていない。

 原告団長の一人、岩村定子さん(65)=五島市奈留町=は「あまりにもひどい決定で、ただただ驚いている」と落胆。一方、カネミ倉庫は取材に対し「これまで通り、患者の治療費などの支払いに全力を尽くす」としている。

◎ズーム/カネミ油症事件

 カネミ倉庫が米ぬか油製造中に、カネカ(旧鐘淵化学工業)製ポリ塩化ビフェニール(PCB)や、これが変質したダイオキシン類が混入。汚染油は本県など西日本各地で販売され、国は予兆を把握しながら対応せず被害が拡大。被害者は内臓疾患など多種多様な症状を抱え続けた。2012年の救済法成立で、当時患者と同居していた家族の認定や支援金支給などが実現。認定患者数は3月末現在、2276人(死亡者含む)で、うち本県は947人。

(2015年6月4日掲載)

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