カネミ油症 原告敗訴確定 「被害者に酷な決定」民法改正議論 反映されず

 長崎県などのカネミ油症新認定患者らが加害企業のカネミ倉庫(北九州市)に損害賠償を求めた集団訴訟は、不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅するという民法の規定「除斥期間」の判断が最大の焦点だった。3月末に閣議決定した民法改正案では、除斥期間の見直しが盛り込まれていただけに、原告側弁護団も落胆の色を隠せない。

 「民法改正の議論がこれから本格的に始まるところだった。決定を出すのはもうちょっと待ってほしかった」。原告側弁護団の古坂良文弁護士は、こう語る。

 民法改正案では「不法行為から20年」について除斥ではなく「時効」と明記。除斥の考え方は取れなくなり、訴訟に効力が及べば20年経過後も請求が認められる可能性があった。ある原告も「望みがつながったと思っていたのに」と明かす。

 一方、立命館大法科大学院の松本克美教授(民法)は、除斥期間の起算点の設定を問題視する。「起算点を油症認定前とすると、被害者が知らないまま損害が発生したことになり、妥当ではない」とし、高裁に差し戻すなど判断し直すべきだったと指摘。「長い期間苦しんだ人が(起算点を油症発生の翌年としたことで)権利行使できないという被害者に酷な決定だ」と断じた。

(2015年6月4日掲載)

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