カネミ油症新認定訴訟 「司法の役割放棄」 原告団、上告棄却を非難

 カネミ油症事件の新認定患者50人と遺族が起こした集団訴訟で原告敗訴が確定した最高裁の上告棄却決定(2日付)を受け、原告・弁護団などは4日、東京都内で抗議集会を開き、「司法の役割を放棄した」と、最高裁を厳しく非難する声明文を出した。

 カネミ油症は1968年に本県など西日本一帯で発生。訴訟は診断基準が見直された2004年以降に認定された人らが08年、原因企業のカネミ倉庫などに総額2億7500万円の支払いを求めた。一、二審とも、損害賠償請求権が不法行為から20年で消滅する民法の規定「除斥期間」を適用し、訴えを退けていた。

 集会は、基準見直し前の認定患者や支援者らを含め約40人が参加。原告団長の一人、岩村定子さん(65)=五島市奈留町=は、大半の原告が油症認定される前に請求権が消滅したとする判断を受け「情けなさでいっぱい。認定されなかったら(裁判に)訴えることはできない」と悔しげに語った。一方で「(油症)2世のことを思うと、まだくじけてはいけない」と支援の継続を呼び掛けた。

 弁護団の吉野高幸弁護士は、除斥規定を見直す民法改正が検討されていることを踏まえ、「なぜこの時期に門前払いなのか。被害者の救済をまったく考えていない」と指摘。参加者からも「被害者をごみの中に捨て去った」「愛のかけらもない」と決定への非難が相次いだ。

(2015年6月5日掲載)

抗議集会で、最高裁の上告棄却決定に悔しさをにじませる岩村さん=東京都千代田区、弁護士会館

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